研究課題/領域番号 |
19H02885
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
片岡 孝夫 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (20242307)
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研究分担者 |
木村 賢一 岩手大学, 農学部, 教授 (30344625)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | α-conidendrin / IKK-16 / isopanduratin A / トリテルペノイド / TNF-α / NF-κB / Eomesodermin |
研究実績の概要 |
リグナン類であるα-conidendeinはTNF-αによって誘導されるICAM-1、VCAM-1、E-selectin、cyclooxygenase-2のmRNA発現を阻害した。α-ConidendrinはNF-κBサブユニットRelAの核移行を阻害しなかったが、RelAのICAM-1プロモーターへの結合を阻害した。以上の結果から、α-conidendrinはTNF-αによるNF-κBシグナル伝達経路を阻害することが明らかになった。 T-box転写因子Eomesoderminを発現させたBW5147細胞において、IκBキナーゼ阻害剤IKK-16がホルボールエステルとカルシウムイオノフォアで誘導されるIFN-γ mRNAの発現を阻害することを見出した。以上より、BW5147細胞のIFN-γの発現にはNF-κB経路が関与していることを明らかにした。 フラボノイド類であるisopanduratin Aは細胞表面のTNFレセプター1の発現を減少させ、この減少はTACE阻害剤TAPI-2処理によって阻害された。さらにisopanduratin Aは培養上清中に低分子量化した可溶性TNFレセプター1を増加させ、この増加はTAPI-2によって抑制された。以上の結果から、isopanduratin AはTNFレセプター1のエクトドメインシェディングを誘導することを明らかにした。 ウルサン型五環性トリテルペノイドのICAM-1の糖鎖修飾と細胞内輸送に対する構造活性相関を検討した。Ursolic acid、corosolic acid、asiatic acidと比較して、OH基を4個有するmadecassic acidは糖鎖修飾と細胞内輸送に対して影響を与えなかった。一方、ursolic acidのカルボキシ基がヒドロキシメチル基に置換されたuvaolでは、ursolic acidと比較して、糖鎖修飾と細胞内輸送に対する作用が弱い、もしくはほとんどないことが明らかになった。 ICAM-1の糖鎖修飾と細胞内輸送に関わる構造活性相関研究のため、ドイツ産琥珀から新たなトリテルペノイド類を単離精製した。PPM1A活性化とRBL-2H3細胞の脱顆粒抑制活性との関連性を、久慈産琥珀から単離したラブダン型の化合物を用いて行い、弱い相関が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、TNF-αによるNF-κBシグナル伝達経路に作用するα-conidendrinの作用メカニズム、TNFレセプター1の発現に作用するisopanduration Aの作用メカニズム、細胞接着因子の糖鎖修飾と細胞内輸送に作用するウルサン型トリテルペノイドの構造活性相関、IFN-γの転写調節におけるNF-κBの役割に関する新しい研究成果が得られた。これらの研究成果を基づき、論文発表と学会発表を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、炎症反応の遺伝子発現やNF-κBシグナル伝達経路を阻害する小分子化合物の作用メカニズムの解明、炎症性サイトカインレセプターやToll様レセプターによる遺伝子発現を阻害する小分子化合物の探索、IFN-γ産生を阻害する小分子化合物の作用メカニズムの解明、低酸素誘導因子のシグナル伝達を阻害する小分子化合物の作用メカニズムの解明、タンパク質輸送と糖鎖修飾に作用する五環性トリテルペノイドの作用メカニズムの解明に関する研究を推進し、得られた研究成果について、論文発表や学会発表を行う。
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