研究課題/領域番号 |
19H02889
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
榊 利之 富山県立大学, 工学部, 教授 (70293909)
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研究分担者 |
橘高 敦史 帝京大学, 薬学部, 教授 (00214833)
生城 真一 富山県立大学, 工学部, 教授 (50244679)
安田 佳織 富山県立大学, 工学部, 講師 (70707231)
西川 美宇 富山県立大学, 工学部, 助教 (90749805)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ビタミンD / ゲノム編集 / ビタミンD受容体 / くる病 / アデノウイルスベクター |
研究実績の概要 |
ビタミンDは、活性型である1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D3)がビタミンD受容体(VDR)に結合して種々の生理作用を示すと考えられてきたが、近年、25-ヒドロキシビタミンD3(25D3)の直接作用やVDRを介さない作用、リガンド非結合型VDRの作用の存在を示唆する研究が報告されている。我々はこれまでに、ゲノム編集法により遺伝子改変ラット ①CYP27B1-KO, ②変異型ビタミンD受容体VDR(R270L), ③VDR-KOを作出し、ビタミンD作用メカニズムの解明を目指してきた。これらのラットはいずれも骨形成不全・骨形態異常を示し、VDR-KOラットでは脱毛と皮膚の形成異常が見られた。今回、新たに④H301Qおよび⑤二重変異VDR(R270L/H301Q)をもつラットの作出を試みた。また、細胞レベルで変異型VDRの機能を解析するため、多種多様な動物細胞に高い感染力を示すアデノウイルスベクターを用いて野生型VDR、R270L、H301QあるいはR270L/H301Q 発現用アデノウイルスベクターを作製し、ゲノム編集法により作製したVDR遺伝子欠損細胞に感染させ、培地に25D3あるいは1,25D3を添加してVDRの核内移行を調べたところ、R270L/H301Qは核内移行が観察されず、リガンドに不応答性であることがわかった。現在、片方のアレルにR270L/H301Q、片方のアレルにH301Qを有するラットの作製に成功しており、それぞれhomo接合体を作製する予定である。野生型および5系統の遺伝子改変ラットの性状を比較することにより、ビタミンD作用の詳細なメカニズムの解明が期待される。また、ラットCYP27B1発現アデノウイルスベクター作製に成功した。これをCYP27B1-KOラットに投与して、くる病症状の改善がみられるか調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度作出予定であったVDRの2重変異体VDR(R270L)/(H301Q)ラットおよび一重変異体VDR(H301Q)の作出に成功した。さらに、ビタミンD作用メカニズムを解明するための新たなシステムとして非増殖性アデノウイルスベクターを導入し、有用性が高いことを実証した。また、新規ビタミンD誘導体を合成した。当初予定していたERp57遺伝子欠損は胎生致死との報告があり研究の実施を断念したが、アデノウイルスベクターという新たなツールの導入もあり、総合的にはおおむね順調という表現が妥当と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
野生型VDR、VDR(R270L)、VDR(H301Q)、VDR(R270L)/(H301Q)、VDR-KOラットの性状を比較し、骨形成、毛包形成等に対するビタミンDおよびビタミンD受容体の作用について詳細に解析する。また、今年度作製した4種のVDR、ラットCYP27B1あるいはヒトCYP24A1を発現するアデノウイルスベクターを培養細胞あるいは遺伝子改変ラットに感染させ、その効果を調べることにより、ビタミンDおよびビタミンD誘導体の作用メカニズムを解明する。また、乾癬モデルマウスに対し顕著な効果を示した複数のビタミンD誘導体について詳細に検討する。
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