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2021 年度 実績報告書

非古典的ストリゴラクトン生合成に関与するシトクロムP450酵素ファミリーの解析

研究課題

研究課題/領域番号 19H02892
研究機関京都大学

研究代表者

増口 潔  京都大学, 化学研究所, 助教 (00569725)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード植物ホルモン / ストリゴラクトン / 生合成
研究実績の概要

ストリゴラクトンは、根圏では根寄生植物やアーバスキュラー菌根菌に作用するアレロケミカルとして、植物体内では枝分かれや老化などを制御する植物ホルモンとして多面的に機能するカロテノイド由来の生理活性分子である。ストリゴラクトンの化学構造は多様性に富んでおり、最初にワタの根滲出物から発見されたストリゴールをはじめとして、これまで様々な植物からABCD環と呼ばれる四環構造を有するストリゴラクトン(古典的ストリゴラクトン)が同定されてきた。一方、最近になってD環部分は保存されているが、古典的ストリゴラクトンの化学構造とは異なる新しいタイプのストリゴラクトン(非古典的ストリゴラクトン)がいくつかの植物種から報告されている。本研究では、イネより見出した新規シトクロムP450酸化酵素 [これまでOsCYPと呼称していたが、本年度よりNon-canonical SL synthase 1 (NCS1)と表記する] を足がかりに、非古典的ストリゴラクトンの生合成と代謝に新しい知見を与えることを目的とする。
これまでに(1)OsNCS1は、ストリゴラクトン生合成中間体であるカーラクトンとカーラクトン酸メチルを基質にすること、(2)カーラクトン酸メチルを基質にした場合の酵素反応産物が、イネの水耕液から同定された新規な非古典的ストリゴラクトンの合成標品と一致すること等を明らかにした。本年度は、OsNCS1の酵素反応中間体もイネの水耕液中に存在するストリゴラクトンであることを明らかにした。また、OsNCS1破壊株2ラインでは、本酵素反応中間体は検出されず、本物質の生合成にもOsNCS1が重要な役割を担うことが示唆された。また、OsNCS1をシロイヌナズナにおいて異種的に過剰発現させた場合、野生型と比較して枝分かれ数に変化が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、LC-MS/MSを用いた定性分析の結果、OsNCS1の酵素反応中間体も、イネの水耕液中に存在するストリゴラクトンであることが明らかになった。また、OsNCS1破壊株の地下部におけるストリゴラクトン関連化合物の内生量をLC-MS/MSによって定量分析した結果、OsNCS1破壊株ではカーラクトンやカーラクトン酸メチルが蓄積していることが明らかとなった。このように、OsNCS1がイネの新規な非古典的ストリゴラクトン生合成に重要な機能を有することが明らかとなった反面、OsNCS1破壊株の表現型解析では、分げつ数や根の発達に野生型と比較して大きな違いは認められなかった。ストリゴラクトンは根圏におけるアレロケミカルとしても機能するため、OsNCS1破壊株を用いて根寄生植物やアーバスキュラー菌根菌との相互作用に関する表現型を追究する必要がある。また、OsNCS1をシロイヌナズナにおいて異種的に過剰発現させた場合、野生型と比較して枝分かれ数に変化が認められるという結果が得られたため、イネにおけるOsNCS1過剰発現体の作出を急いで進めたいと考えている。
さらに、本年度はカーラクトン酸からカーラクトン酸メチルへの変換酵素であり、非古典的ストリゴラクトンの生合成に重要であると考えられる「カーラクトン酸メチル化酵素 (CLAMT)」をシロイヌナズナにおいて同定し、論文発表を行った。

今後の研究の推進方策

これまでの結果を基に、下記の実験を実施する。
(1)上述の新規な非古典的ストリゴラクトンやその酵素反応中間体を、様々なストリゴラクトン生合成変異体やストリゴラクトン信号伝達変異体を材料にして分析を行い、論文発表の準備を進める。また、遅れているイネのOsNCS1過剰発現体の作出を進めるとともに、OsNCS1破壊株についてはストリゴラクトンの根圏アレロケミカルとしての機能に着目した表現型解析を行う。さらに、OsNCS1の発現部位やリン欠乏応答性などについて遺伝子発現解析を行う。
(2)シロイヌナズナでOsNCS1を異種的に過剰発現した場合、枝分かれ数に変化が認められたため、この過剰発現体におけるストリゴラクトン関連化合物の定量分析を行うことなどによって原因の追究を行う。
(3)OsNCS1ホモログの中で、植物体を用いた過剰発現や遺伝子破壊で興味深い表現型が観察された遺伝子に関して、酵素機能の追究および過剰発現株や遺伝子破壊株におけるストリゴラクトン関連化合物などの定量分析を行う。
(4)シロイヌナズナにも、OsNCS1ホモログが存在する。昨年度までにこれらの過剰発現株のホモラインを確立した。本年度は、各ホモラインを用いてストリゴラクトンに関連した表現型観察を詳細に行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] University of Amsterdam(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      University of Amsterdam
  • [雑誌論文] A carlactonoic acid methyltransferase that contributes to the inhibition of shoot branching in Arabidopsis2022

    • 著者名/発表者名
      Mashiguchi Kiyoshi、Seto Yoshiya、Onozuka Yuta、Suzuki Sarina、Takemoto Kiyoko、Wang Yanting、Dong Lemeng、Asami Kei、Noda Ryota、Kisugi Takaya、Kitaoka Naoki、Akiyama Kohki、Bouwmeester Harro、Yamaguchi Shinjiro
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

      巻: 119 ページ: e2111565119

    • DOI

      10.1073/pnas.2111565119

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Synthesis and structure-activity relationship of 16,17-modified gibberellin derivatives2022

    • 著者名/発表者名
      Ishida Toshiaki、Watanabe Bunta、Mashiguchi Kiyoshi、Yamaguchi Shinjiro
    • 雑誌名

      Phytochemistry Letters

      巻: 49 ページ: 162~166

    • DOI

      10.1016/j.phytol.2022.03.022

    • 査読あり
  • [学会発表] イネにおける非典型的ストリゴラクトン生合成酵素の機能解析2022

    • 著者名/発表者名
      増口潔, 小林峻大, 北岡直樹, 谷口浩規, 橋田丈徳, 徳永浩樹, 経塚淳子, 秋山康紀, 山口信次郎
    • 学会等名
      第63回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] Activation of strigolactone biosynthesis by the DWARF14-LIKE pathway in rice2021

    • 著者名/発表者名
      Mashiguchi K, Morita R, Tanaka K, Kameoka H, Kyozuka J, Seto Y, Yamaguchi S
    • 学会等名
      Pacifichem 2021
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 所属研究室ホームページ

    • URL

      https://www.scl.kyoto-u.ac.jp/~plant/index.html

  • [備考] 研究成果の紹介ページ

    • URL

      https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2022-03-30-0

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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