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2020 年度 実績報告書

アミノグリコシド系抗生物質の生合成酵素構造解析を基盤とする新規物質生産系の開拓

研究課題

研究課題/領域番号 19H02895
研究機関東京工業大学

研究代表者

工藤 史貴  東京工業大学, 理学院, 准教授 (00361783)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワードアミノグリコシド系抗生物質 / カナマイシン / 生合成 / 酵素 / 構造機能解析
研究実績の概要

本研究は、アミノグリコシド系抗生物質生合成マシナリーの人為的改変による新規抗生物質創製を念頭におき、生合成に関わる酵素の構造機能解析を通じた生合成基盤を構築することを目的としている。2020年度は、カナマイシン生合成経路の全貌解明を中心に研究を進めた。
カナマイシン生合成経路で明確になっていなかったのは、6'位のアミノ基導入と2'位の脱アミノ化のタイミングであった。2'位の脱アミノ化については、酸化酵素KanJと還元酵素KanKが関わることを明らかにしていたので、候補基質を用いてKanJの酵素反応速度論的解析を行った。その結果、6'位にアミノ基を有している化合物であれば2'位の脱アミノ化が進行することが分かった。さらにKanJについては、X線結晶構造解析により、6'位のアミノ基を認識するアミノ酸残基を特定することができた。このことから6'位のアミノ基導入は、2'位の脱アミノ化よりも先に起こることが示唆された。
6'位のアミノ基導入については、FAD依存酵素KanQが6'位の脱水素化を触媒し、ついでPLP依存酵素KanBがアミノ基転移反応を触媒することが推定された。候補基質を用いてKanQの酵素反応速度論解析を行った結果、カナマイシンCが最も良い基質であることが分かった。またカナマイシンCはKanQとKanBにより効率よくカナマイシンBへと変換された。
以上まとめると、カナマイシン生合成においては、まず擬似二糖中間体であるパロマミンが配糖化され3"-デアミノ-3"-ヒドロキシカナマイシンCが生成し、ついでKanD2とKanS2により3"位のアミノ基の導入が触媒されカナマイシンCが生合成される。その後、KanQとKanBにより6'位のアミノ基が導入されカナマイシンBが生成し、最後にKanJとKanKにより2'位が脱アミノ化されてカナマイシンAが生合成されることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アミノグリコシド系抗生物質の代表的な存在であるカナマイシンの生合成酵素の機能解析を進め、2019年度からの二年間でカナマイシン生合成機構の全貌を解明することができた。またこれまでに、カノサミン部位のアミノ基導入に関わる脱水素酵素KanD2と2'位の脱アミノ化に関わる酸化酵素KanJの結晶構造を解明することができたので、まずは順調に研究を進められていると考えている。これら構造解析については論文発表と国際学会発表することもできた。
以上の構造解析から、アミノグリコシド系抗生物質の生合成酵素を含めオリゴ糖を認識する酵素は、CH-π相互作用を多く利用して選択的に基質を認識する可能性があることが分かってきたと考えている。アミノグリコシド系抗生物質の生合成に関わる他の酵素に関しても結晶化を検討しており、構造機能解明に向けた研究を進められている。

今後の研究の推進方策

2021年もアミノグリコシド系抗生物質の生合成に関わる酵素の機能構造解析を継続的に進める。2020年度までにカナマイシン生合成機構の全貌を解明したので、他のアミノグリコシド系抗生物質の特徴的な化学構造形成に関わる酵素の機能構造解析を進める。
2021年度は、イスタマイシンに見られる特徴的な1,4-ジアミノサイクリトール部位の形成機構、ジデオキシ化部位の構築に関わると推定している酵素の機能解析を進める。それ以外にも、多種多様な化学構造を有するアミノグリコシド抗生物質に着目し、特徴的な修飾機構に関わる酵素遺伝子を探索する。
またこれまでに、カナマイシン、ネオマイシン、ブチロシン生合成機構の全貌解明に成功しているが、これら抗生物質の全ての生合成酵素の結晶構造解析に成功したわけではない。そこで、2021年度も引き続き、構造未決定の酵素の結晶化を検討し構造決定を試みる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] One-pot enzymatic synthesis of 2-deoxy-scyllo-inosose from D-glucose and polyphosphate2021

    • 著者名/発表者名
      Fumitaka Kudo, Ayaka Mori, Mai Koide, Ryo Yajima, Ryohei Takeishi, Akimasa Miyanaga, Tadashi Eguchi
    • 雑誌名

      Biosci. Biotechnol. Biochem.

      巻: 85 ページ: 108_114

    • DOI

      10.1093/bbb/zbaa025

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stepwise post-glycosylation modification of sugar moieties in kanamycin biosynthesis2021

    • 著者名/発表者名
      Fumitaka Kudo, Ykinobu Kitayama, Akimasa Miyanaga, Mario Numakura, Tadashi Eguchi
    • 雑誌名

      ChemBioChem

      巻: 22 ページ: 1668_1675

    • DOI

      10.1002/cbic.202000839

    • 査読あり
  • [学会発表] バクテリオホパンポリオール生合成において炭素-炭素結合形成反応を触媒するラジカルSAM酵素HpnHの機能解析2021

    • 著者名/発表者名
      佐藤 秀亮、工藤 史貴、Michel Rohmer、江口 正
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会(2021)(オンライン開催)
  • [学会発表] 抗腫瘍抗生物質パクタマイシン生合成における脱水素酵素PctPの基質特異性2021

    • 著者名/発表者名
      岡田 一歩、平山 茜、工藤 史貴、江口 正
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会(2021)(オンライン開催)
  • [学会発表] Kanamycin biosynthesis- post-glycosylation modification of sugar moieties2021

    • 著者名/発表者名
      Fumitaka Kudo, Yukinobu Kitayama, Akimasa Miyanaga, Tadashi Eguchi
    • 学会等名
      Directing Biosynthesis online
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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