研究実績の概要 |
本研究は、アミノグリコシド系抗生物質生合成マシナリーの人為的改変による新規抗生物質創製を念頭におき、生合成に関わる酵素の構造機能解析を通じた生合成基盤を構築することを目的としている。2020年度までにカナマイシン生合成経路の全貌解明に成功したので、2021年度は他のアミノグリコシド系抗生物質の特徴ある構造の形成機構に関わると推定された酵素の機能解析を中心に進めた。 イスタマイシンは擬似二糖アミノグリコシドであり、カナマイシン等に見られるメジャーな1,3-ジアミノサイクリトールである2-デオキシストレプタミンとは異なる1,4-ジアミノサイクリトールを有している。さらに、特徴的な3,4-ジデオキシアミノ糖の構築機構に興味が持たれた。まず、これらアミノグリコシド抗生物質の共通的な生合成中間体である2-デオキシ-scyllo-イノサミンをD-グルコースから3つの酵素を用いて調製する方法を確立した。 次に、2-デオキシ-scyllo-イノサミンの6位アルコールが酸化され、さらにアミノ化されて1,4-ジアミノサイクリトールが形成される機構を想定して種々検討したが期待した酵素活性を見出すことができなかった。そこで、2-デオキシ-scyllo-イノサミンがまず配糖化される経路を検討した。その結果、低効率ながら2-デオキシ-scyllo-イノサミンが糖転移酵素IstMによって配糖化されることが分かった。しかしながら、再現性が低く配糖化物の構造決定には至らなかった。 そこで遺伝子登録情報を今一度見直し、イスタマイシン生合成遺伝子クラスターに類似するもので機能解析が手付かずのものが複数存在することに気付いた。そこで、それらホモログ酵素を活用することで、より高活性な酵素が存在することを期待して機能解析を行なった。結果としてIstMより高活性な酵素を見出すことができ酵素反応生成物の構造決定を進めている。
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