研究実績の概要 |
本研究は、アミノグリコシド系抗生物質生合成マシナリーの人為的改変による新規抗生物質創製を念頭におき、生合成に関わる酵素の機能構造解析を通じた生合成基盤を構築することを目的としている。2020年度までにカナマイシン生合成経路の全貌解明に成功した。2021年度は1,4-ジアミノサイクリトールを有するイスタマイシン類の生合成酵素の機能解明に向けて手掛かりを得たので、2022年度はそれを基に研究を進めた。 イスタマイシン類は擬似二糖アミノグリコシドであり、カナマイシン等に見られる1,3-ジアミノサイクリトールである2-デオキシストレプタミン(2DOS)とは異なる1,4-ジアミノサイクリトールを有している。いずれも共通的な中間体である2-デオキシ-scyllo-イノサミン(DOIA)経由で生合成されることが示唆されていたが、二つ目のアミノ基導入のタイミングがそれぞれで異なる可能性が考えられた。すなわち、2DOSはDOIAが脱水素化されて生じるケトン中間体がアミノ化を受けることで生合成されるため、1,4-ジアミノサイクリトール生合成でもDOIAの脱水素化とアミノ化が起こる可能性が考えられた。しかし先行研究から、DOIAが配糖化されてから二つ目のアミノ基が導入される可能性も考えられた。そこで2022年度は、DOIAの配糖化が先に起こる経路を検証した。その結果、DOIAが糖転移酵素によりN-アセチルグルコサミニル化され、さらに脱アセチル化されグルコサミニル化されたDOIA(GlcN-DOIA)が生成することが明らかとなった。またGlcN-DOIAは、推定脱水素化酵素とアミノ基転移酵素により二つ目のアミノ基が導入されることが示唆された。 さらに、4'-デオキシブチロシン生合成における4'-デオキシ化機構解明に向けて研究を進めることができた。
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