研究実績の概要 |
本研究は、アミノグリコシド系抗生物質生合成マシナリーの人為的改変による新規抗生物質創製を念頭におき、生合成に関わる酵素の機能構造解析を通じた生合成基盤を構築することを目的とした。2020年度までにカナマイシン生合成経路の全貌解明に成功した。2021年度は1,4-ジアミノサイクリトールを有するイスタマイシン類の生合成酵素、2022年度は4'-デオキシブチロシンの生合成酵素について手がかりを得ていたので、2023年度は研究成果をまとめることを念頭におき研究を行なった。 イスタマイシン類は擬似二糖アミノグリコシドであり、カナマイシン等に見られる1,3-ジアミノサイクリトールである2-デオキシストレプタミン(2DOS)とは異なる1,4-ジアミノサイクリトールを有している。いずれも共通中間体である2-デオキシ-scyllo-イノサミン(DOIA)経由で生合成されるが、2DOS はDOIAの脱水素化とアミノ化により構築されるのに対し、1,4-ジアミノサイクリトールはDOIAが配糖化されてから二つ目のアミノ基が導入されることを示唆する結果を得ていた。そこで2023年度は、DOIAが糖転移酵素によりN-アセチルグルコサミニル化され、さらに脱アセチル化されグルコサミニル化されたDOIA(GlcN-DOIA)を調製して、推定脱水素化酵素とアミノ基転移酵素により二つ目のアミノ基が導入された生成物を単離構造決定することを検討した。種々条件検討した結果、さらに推定メチル化酵素を加えることで平衡反応を偏らせることに成功した。 4'-デオキシブチロシン生合成における4'-デオキシ化機構については、ヌクレオチド転移酵素が生合成中間体の4'位水酸基をアデニニル化することが引き金となっていることを示唆することができた。さらに、FMN依存還元酵素が還元してデオキシ化中間体が生成することを示唆することができた。
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