研究実績の概要 |
(1)テトロドトキシン(TTX)関連化合物群の網羅合成:イモリに特有なTTXの生合成前駆体の候補化合物であるhemiketal-TTXの8デオキシ体の合成に成功した。さらに、フグに特有なTTXの生合成前駆体の候補化合物群(Tb-210B, 226, 242C, 258)の網羅的全合成にも成功した。これらは、構造がTTXに類似しているため、TTXと同様のNaチャネル阻害活性が期待される。なお、いずれも世界初の合成である。 (2)海産天然物アプリシアトキシン(ATX)・オシラトキシン(OTX)類の網羅的合成:昨年に引き続きATXの合成中間体から、neo-deBr-ATX-B, OTX-H, OTX-D, neo-deBr-ATX-H, OTX-IのOMe体の網羅的合成に成功した。それぞれ、2-3段階での極めて効率のよい合成である。この合成過程で、neo-deBr-ATX-BとOTX-Hの構造決定の一部に誤りがあることに気づき、それを修正した。さらに、おなじ中間体から天然には存在しない12員環マクロリド、8員環ラクトンも得られる条件を発見した。本研究によって、この中間体(天然物ではATXそのもの)が極めて多様な環構造を形成することのできる特別な構造であることが明らかになった。今後、医農薬のシード化合物や生物学研究のツール分子の開発で重要な化合物ライブラリーの迅速構築に活用されることが期待される。 現在、本研究で合成された化合物群の生物活性評価が進行中である。
|