研究課題/領域番号 |
19H02897
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
杉本 幸裕 神戸大学, 農学研究科, 教授 (10243411)
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研究分担者 |
滝川 浩郷 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40271332)
水谷 正治 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (60303898)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ストリゴラクトン / オロバンコール / デオキシストリゴール |
研究実績の概要 |
初年度に、主たるストリゴラクトン(SL)としてorobancholを生産するトマト(Solanim lycopersicum)とササゲ(Vigna unguiculata)において、carlactonoic acid(CLA)を環化させorobancholを与える反応に関わる酵素遺伝子としてCYP722C(SlCYP722C、VuCYP722C)を同定した。その後、他の研究グループより、5-deoxystrigol(5DS)を生産するミヤコグサのLORE-1変異体の解析から、5-deoxystrigol defective(DSD)と名付けられたCYP722C遺伝子が5DSの生合成に関わることが報告された。そこで二年度目には、DSD遺伝子をクローニングし大腸菌で発現させて、CLAを基質として酵素反応を行ったが、5DSの生成は確認できなかった。並行して、5DSを生産するワタ(Gossypium arboreum)からもCYP722C遺伝子をクローニングし発現させて酵素反応を行った。その結果、GaCYP722CはCLAを立体特異的に環化し5DSに変換することを確認した。 一方、ゲノム編集によってSlCYP722Cをノックアウトしたトマト(SlCYP722C ko)では、地上部の枝分かれが増えるSL欠損形質が認められなかった。根分泌物にBC環を有するSLが検出されなかったことから枝分かれ抑制活性には必ずしもBC環は必要ないと考えられた。max1変異体が枝分かれ過剰な表現型を示すことから枝分かれ抑制活性本体はCLAから誘導されると考えられる。そこで、SlCYP722C ko抽出物を、SLを鋭敏に検出できるストライガ(Striga hermonthica)の発芽試験に供したところ、顕著な活性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度のorobancholに続いて二年度目には5-deoxystrigolの生合成に関わる酵素遺伝子を同定した。これらBC環を有するcanonical SLが枝分かれに必須でないことを明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究で、異なるBC環を有する代表的なSLである、orobancholと5-deoxystrigolの環形成に関わる酵素遺伝子を同定した。Orobancholについては生産能を欠失したトマト変異体SlCYP722C koを作出した。この変異体に過剰な枝分かれが認められなかったことから、少なくともトマトにおいては、枝分かれ抑制活性にBC環が必要ではないことを明らかにした。最終年度には、この知見を立体の異なるSLでも検証するために、LORE-1変異体が利用できるミヤコグサを材料として、5-deoxystritol生産能を欠失した変異体の生産するSLのプロファイルとその表現型を調べる。 ワタのCYP722CはCLAを立体選択的に5-deoxystrigolに変換したのに対し、トマトとササゲのCYP722CはorobancholだけでなくBC環の立体が異なるジアステレオマーであるent-2’-epi-orobancholも生成する。トマトとササゲの水耕液にはent-2’-epi-orobancholは検出されないことから、orobanchol生合成におけるBC環形成に関わるCYP722C以外の因子を探索する。 また、本課題の核心をなす学術的問いである「枝分かれ抑制ホルモンの化学的実体」に迫るべく、SlCYP722C ko植物が生産する枝分かれ抑制活性本体を精製する。シロイヌナズナmax1変異体が枝分かれ過剰な表現型を示すことから枝分かれ抑制活性本体はCLAから誘導されると考えられるので、精製には、SLを鋭敏に検出できるストライガ(Striga hermonthica)の発芽試験を用いる。
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