高度に精製したトマトSlCYP722Cタンパク質を用いて、carlactonoic acid (CLA)をorobancholだけでなくC環の立体配置が異なるent-2′-epi-orobancholにも変換する反応を詳細に解析した。その結果、酸処理によって反応を停止した場合はorobancholとent-2′-epi-orobancholの両方が検出されたのに対して、酸処理を行わなかった場合それらは検出されず、代わって、新規ピークが検出された。酵素反応産物をTMS ジアゾメタンによりメチル化しLC-MS/MS分析に供した結果、18-oxo-MeCLA合成標品と一致するピークを検出できたことから、新規ピークを18-oxo-CLAと同定した。酵素反応溶液にorobancholとent-2′-epi-orobancholの両方が検出されたのは、酸性条件下で18-oxo-CLAが非酵素的に環化したためであると考えられた。したがって、orobanchol生合成にはCYP722Cと協調して機能する因子が関与し、その機能は18-oxo-CLAをorobancholに立体選択的に変換することであると理解された。また、SlCYP722Cをノックアウトしたトマト(SlCYP722C ko)の根分泌物にはorobancholが検出されなくなり、代わりにCLAが検出された。一方で、地上部形態に野生型と顕著な差異が認められなかったことから、SlCYP722C koを用いて生理活性ストリゴラクトンの探索を行った。ストリゴラクトンを鋭敏に検出できるストライガ(Striga hermonthica)の種子発芽刺激活性を指標に、SlCYP722C ko抽出物の精製を進めた結果、トマトに含まれる既知のストリゴラクトンとは異なる画分に活性を回収した。
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