研究実績の概要 |
真菌類や植物には結合様式の異なる様々なα型とβ型のマンナン(D-マンノ-スを含む多糖類)が含まれる。マンナンは「免疫系に対する機能を持つ食品成分」と注目され、その機能性の科学的解析が求められている。本研究はマンノ-ス骨格を持つ分子の免疫学的な意義を明らかすることを目的とする。また、日本の国菌と言われる「麹菌」を用いてマンノシル化アレルゲンを発現する麹菌を構築し、抗アレルギ-作用を持つマンナン分子の作製を目指す。本年度はまずβ型マンノオリゴ糖の調製を行い、その免疫機能性を解析した。その結果、β-Man-(1→4)-Manやβ-Man-(1→4)-Glc骨格を持つオリゴ糖の中で、β-1,4-マンノビオースがマウス骨髄樹状細胞を高レベルで活性化することが明らかになった。また、α型マンナンをβ-1,4-マンノビオースや他の多糖類と共に樹状細胞を刺激すると、樹状細胞による抗炎症サイトカイン産生が増強されることを見いだした。αマンノオリゴ糖に関しては、α-1,2およびα-1,6結合への伸長方向が任意に制御可能な保護基の組み合わせによるαマンノオリゴ糖の合成ルート構築を実施した。この目的を満たす共通中間体の最適化を行い、中間体を使用することによりそれぞれのα-1,2およびα-1,6結合型の直鎖オリゴ糖をベンジルグリコシド体として調製するルート構築に成功した。マンノシル化アレルゲンを発現する麹菌に関しては、オボアルブミン(OVA:モデルアレルゲン)の cDNAを麹菌グルコアミラーゼglaAの触媒ドメインをコードするDNAの下流に連結し、GlaA-OVA融合タンパク質として麹菌で発現させた。2日間液体培養した培養上清500 µL分をSDS-PAGEに供し、Coomassie Brilliant Blue R-250染色したところ、OVAの発現が確認できたが発現量は低かった。
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