研究課題/領域番号 |
19H02906
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 誠 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (40409008)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 老化 / FGF21 / ATF4 / アンチエイジング |
研究実績の概要 |
FGF21(fibroblast growth factor 21)は主に肝臓で合成・分泌されるホルモン分子であり抗肥満効果など様々なエネルギー代謝改善効果やマウスにおいては寿命延伸効果を有することが知られている。ATF4(activating transcription factor 4)は小胞体ストレスや酸化ストレスなど様々なストレス条件下で活性化する転写因子であり、レドックス関連の遺伝子やFGF21の発現を制御することが知られている。2019年度は、ATF4とFGF21について、抗老化作用に関する研究を試みた。まず転写因子ATF4の強制発現方法の構築を試みた。マウス肝臓に発現させるため、ATF4を発現するアデノウイルスを調製した。ATF4を含むアデノウイルスベクターを構築し、293A細胞を用いて大量調製を行った。培養細胞を用いた検討実験では、このアデノウイルスによるATF4のタンパク質発現が問題なく認められた。次に、大量精製したアデノウイルスを微静脈経由で若齢マウスに投与した。ウェスタンブロッティングによる検討の結果、肝臓でのATF4の十分な発現が認められた一方でウイルスによる毒性も観察された。本研究計画では高齢マウス、もしくは老化促進マウス(SAMP8マウスなど)での強制発現実験を行うため、毒性が低い手法が必要となった。これらの点から、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた実験系の構築を進めている。AAVは毒性が低い点に加え、アデノウイルスと比較して目的遺伝子を長期間発現可能である。これらの点より、AAVを用いた発現実験系の構築を速やかに行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、いくつかの老化モデルマウスを用いて転写因子ATF4の強制発現実験を実施する予定であった。しかしながら、研究概要に記述したようにアデノウイルスによる発現実験において毒性が見られた。若齢マウスと比較して、高齢マウスは様々なストレスに対する感受性が高いことが予想されたため、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた発現実験系に切り替えることとした。毒性に加えて、AAVは長期に渡り目的因子を発現させることが可能である。AAVの大量調製や発現検討実験はアデノウイルスと比較して、時間がかかることが予想されるが、速やかに遂行する予定である。次年度に実施予定の研究内容(ATF4-FGF21経路を活性化する食品成分による抗老化効果の検証)に関しては、上記の実験結果の目途が決ある程度見られたら、速やかに開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、転写因子ATF4のAAVを用いた強制発現実験系の構築を速やかに遂行する。また、次年度に予定しているATF4-FGF21経路を活性化する機能性食品成分による抗老化作用の検証に関してはAAV実験系の目途がつき次第開始する。最終年度に予定しているATF4を活性化する新たな抗老化シグナルの同定は予定通り実施予定である。
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