研究課題
超高齢社会である我が国では医療・介護費の膨大化が重大な問題であり、高齢者のQOLを維持・改善し健康寿命を延伸させることが求められている。肝臓で発現・分泌される抗肥満ホルモンであるFGF21(fibroblast growth factor 21)は、様々な栄養状態下で発現が亢進することが知られている。FGF21は様々な組織のエネルギー代謝改善効果に加え、寿命延伸効果が報告されている。このことから、FGF21は健康寿命延伸のに重要な標的分子と考えられる。転写因子ATF4(activating transcription factor 4)はFGF21の発現制御因子であり、これまで我々はATF4の活性化シグナル(酸化ストレス、小胞体ストレス、アミノ酸シグナル)でFGF21の発現が増加することを報告している。本研究では、ATF4-FGF21経路が健康寿命延伸に繋がるシグナル経路と考え、老化モデルマウスを用いた実験を実施している。今年度は、実験動物における標的分子の安定的な発現の実験系の構築を行った。これまで組換えアデノウイルスを用いていたが、投与マウスにおいて目的因子の発現が短期であること、一部のアデノウイルスによる毒性が確認されたことから、実験動物を用いた長期実験が実施できなかった。肝臓選択的なプロモーターを用いたアデノ随伴ウイルス(AAV)での強制発現系を試行した結果、ウイルス投与による毒性は見られず、且つ長期に目的因子を発現させることに成功した。構築したAAVの実験系を用いて、老化モデルマウスにおける様々なパラメーターを解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた目的因子の長期且つ毒性の無い強制発現系の構築に成功した。EGFPを用いた検討実験の結果、少なくとも1~2ヶ月は安定的に発現することを確認済みである。AAVによる遺伝子ノックダウンの実験系については現在検討中だが、動物投与実験に使用可能なAAVの大量精製は確立済みであるため、問題なく実施可能と考えられる。
構築したAAVを用いて老化モデルマウスにATF4やFGF21を発現もしくはノックダウンし、様々なパラメーターを解析する。変動が認められた経路については、網羅的に遺伝子発現解析やメタボローム解析を実施しその分子機構を解明する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 296 ページ: 100131~100131
10.1074/jbc.RA120.016203
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 529 ページ: 328~334
10.1016/j.bbrc.2020.03.189
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 85 ページ: 440~446
10.1093/bbb/zbaa036