研究課題
コレステロール生合成経路が脂肪組織機能調節において果たす役割を明らかにするため、2021年度は以下のような検討を行なった。昨年度までに樹立した、時期特異的に脂肪細胞のコレステロール合成を欠損(KO)可能な遺伝子組換えマウス(HMGCR iAKO マウス)を用いて各種検討を行なった。高脂肪食負荷により肥満誘導したHMGCR iAKO マウスに対して、タモキシフェンを投与しKOを誘導すると、KO誘導後体重の低下が認められた。脂肪組織変化を観察したところ、普通食摂取時と同様にタモキシフェン投与後経時的に脂肪細胞数が低下し、その後回復に転じることが明らかになった。また、経時的に血液パラメータを確認すると、脂肪細胞数の減少に応じて血糖値、血中中性脂肪値が上昇し、脂肪細胞数の回復とともに対照群と同程度まで回復した。肥満マウスに対するKOの誘導により、摂餌量の低下が認められたことから、対照群に制限給餌を行い、同様に検討したところ、KO群では対照群に比して体重の減少が認められ、これらの一部は脂肪組織重量の低下に起因することが明らかになった。また、KO誘導後の脂肪組織の遺伝子発現変化を確認したことろ、KO誘導後、脂肪細胞マーカー遺伝子の発現低下、マクロファージマーカー遺伝子・炎症関連遺伝子の発現上昇が一過性に認められ、その後対象群と同程度に戻ることが明らかになった。以上より、肥満状態の脂肪細胞において、コレステロール合成経路は正常組織機能の維持において重要な役割を担っていることが明らかになった。また、コレステロール合成経路の欠損は一過性に脂肪細胞数を低下させ、脂肪組織機能異常をきたすが、その後回復することが明らかになった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 86 ページ: 380~389
10.1093/bbb/zbab216
http://www.foodfunc.kais.kyoto-u.ac.jp/index.html