研究課題/領域番号 |
19H02912
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮本 敬久 九州大学, 農学研究院, 教授 (70190816)
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研究分担者 |
本城 賢一 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00264101)
益田 時光 九州大学, 農学研究院, 助教 (90778060)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ファージ / 抗生物質耐性 / 遺伝子欠損株 |
研究実績の概要 |
腸管出血性大腸菌特異的ファージをこれまでに13株分離しているが、これらのうち、7株はピペラシリン耐性の大腸菌O157:H7にも強い溶菌活性を示した。また、広範なベータラクタム剤耐性の大腸菌に対しても有効なファージを取得している。これまでに分離できたCampylobacter coli特異的な溶菌ファージ26株のうち、12株は6剤(セファゾリン、スルファメトキサゾール:トリメトプリム、ミノサイクリン、ナリジクス酸、シプロフロキサシン、レボフラキサシン)耐性菌にも有効で、24株は5剤(セファゾリン、スルファメトキサゾール:トリメトプリム、ナリジクス酸、シプロフロキサシン、レボフラキサシン)耐性菌を溶菌することが示された。分離された腸管出血性大腸菌およびC. coli特異的溶菌ファージのうち、4℃の低温でも効果を示すファージ株を見出した。さらに、黄色ブドウ球菌特異的な溶菌ファージも29株分離できており、今後、抗生物質耐性菌への効果を検討予定である。 また、大腸菌の一遺伝子欠損株のファージ感受性を調べた。96ウェルプレートを用いたスクリーニングの結果、3,909種類の一遺伝子欠損株のうち、Δrpeを含む10菌株が強いファージ感受性を示した。ファージ添加に伴う生菌数の経時的変化を調べた結果、野生株にファージを添加した場合と比較して、Δrpeでは培養12時間後には4.7桁、培養24時間後においても生菌数は2.6桁低かった。他の9菌株においても同様の傾向を示したことから、これらの遺伝子の機能を抑制することによりファージ耐性菌の増殖を抑制できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに抗生物質耐性株を含む腸管出血性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌特異的なファージを分離できており、抗生物質耐性株に対する効果も一部確認できている。さらに大腸菌の一遺伝子欠損株のファージ感受性を調べた結果、3,909種類の一遺伝子欠損株のうち、Δrpeを含む10菌株が強いファージ感受性を示すことを明らかにしており、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに抗生物質耐性株を含む腸管出血性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌特異的なファージを分離できており、抗生物質耐性株に対する効果も一部確認している。さらに、リステリア特異的ファージの分離、また分離済みのサルモネラ特異的ファージなどについて抗生物質耐性菌への効果、低温での溶菌効果を調べる計画である。 また、ファージ感受性が親株よりも高くなった遺伝子欠損株については、これらの菌株のファージ添加後の生育挙動を詳細に調べ、被感染性の変化、被溶菌性の変化、耐性菌存在比率の変化などについて明らかにする予定である。 さらに、ファージと併用、あるいはファージ処理前の前処理に用いることでファージ耐性菌の生育を抑制、あるいはファージ感受性を高める天然由来物資を植物ポリフェノールなどから検索する予定である。
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