研究課題/領域番号 |
19H02912
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮本 敬久 九州大学, 農学研究院, 教授 (70190816)
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研究分担者 |
本城 賢一 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00264101)
益田 時光 九州大学, 農学研究院, 助教 (90778060)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ファージ / ファージ耐性菌 / 抗生物質耐性 / 食中毒細菌 / カンピロバクター / 腸管出血性大腸菌 / ポリフェノール |
研究実績の概要 |
宿主域が広く、実際に食品における食中毒細菌制御に利用可能と思われる分離したファージについてゲノムDNAの塩基配列を決定した。Campylobacter coli 特異的なファージ CAM-P21は、日本のCampylobacter coli を使用して牛挽肉サンプルから単離されたバクテリオファージで、平均GC含量が31.19%、12,587bpのゲノムサイズで、アクセッション番号MW462221でGenBankデータベースに寄託した。また、大腸菌特異的ファージのうち、腸管出血性大腸菌および非病原性大腸菌に感染できるファージFP43は169,248bpからなるdsDNAゲノムを持ち、安定性が良好で、バイオフィルムの形成を減少させた。ゲノム配列はGenBankデータベースにアクセッション番号MN648445.1で寄託した。 また、DnaKの機能を阻害する効果が高いことが報告されているミリセチン (Myr) を用いて、ファージとの併用効果を検討した。大腸菌BW25113野生株についてMyr (終濃度0.5mM) で処理後、ファージを添加したところ、Myrで6 h処理した菌体ではMyr未処理に比べてファージ添加後の生菌数が約1.0 log CFU/ml低かった。1mM Myrによる6 h処理後にファージをMOI=1000となるように添加すると54時間まで生残菌の生育が認められなかった。この結果より、Myr添加数時間後にファージを添加すると,ファージ耐性菌の生育を大きく抑制することが示された。更に他の遺伝子欠損によりファージ感受性が高まった遺伝子の機能を阻害する物質についても検索して検証する計画である。 植物などの抽出物を中心に、トキシンまたはアンチトキシンの分解に関係する菌体内プロテアーゼ遺伝子転写量を増加させる物質はこれまでのところ見出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、Campylobacter coli 特異的なファージ CAM-P21、腸管出血性大腸菌および非病原性大腸菌に感染できるファージFP43についてゲノム塩基配列を決定した。更に、宿主域の広いCampylobacter jejuni特異的なファージについても現在決定作業を進めているところである。また、遺伝子欠損によりファージ感受性の高まった遺伝子について、その機能を阻害する物質について文献調査を行った結果、DnaKの機能を阻害するミリセチンを見出し,実際に大腸菌を処理するとファージ感受性が高まることを見出し、さらに、その機構について検討している、また、他の遺伝子についても機能阻害物質を文献調査の結果、見出しており,現在その効果を検証中である。トキシンまたはアンチトキシンの分解に関係する菌体内プロテアーゼ遺伝子の転写量を増大させる物質は見出せていないが、おおむね順調に研究は進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、大腸菌についてDnaK遺伝子欠損株はファージ感受性が高まることを見出し、これは野生株においてもDnaKの機能を阻害する可能性のあるポリフェノール:ミリセチン処理により同等の効果が得られることを明らかにした。この効果が、他の食中毒細菌:サルモネラ、カンピロバクター、リステリア、黄色ブドウ球菌でも同様に発現されるのかを各細菌特異的な溶菌ファージを用いて検証し、普遍性について検討する計画である。既にリステリア特異的ファージは単離されているが,更に溶菌効果の高いファージの単離や抗生物質耐性菌への効果について継続して検討する予定である。また、トキシンまたはアンチトキシンの分解に関係する菌体内プロテアーゼ遺伝子の転写量を増加させる物質の検索も継続する予定である。これらこの結果から、実際の食品系においてもミリセチン等によりファージの溶菌効果増大が期待できるか否か検討する計画である。
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