研究課題
シロイヌナズナのANAC082遺伝子は、核小体ストレス応答において重要な役割を担う転写因子をコードする。研究代表者のグループはこれまでに、核小体ストレスに応答したANAC082の発現誘導に5'非翻訳領域に存在するuORFが関与することを見出した。一方、シロイヌナズナにおけるANAC082と最も相同性の高いホモログであるANAC0103は小胞体ストレス応答に関与しており、小胞体ストレスに応答して転写段階で発現が誘導されることが知られている。昨年度の研究では、ANAC082の発現は核小体ストレスに応答して誘導されるが、転写段階と翻訳段階のいずれにおいても小胞体ストレスには応答しないことが示された。また、ANAC0103のuORFはANAC082のuORFとアミノ酸配列が部分的に似ているが、ANAC082 uORFのようなアミノ酸配列依存的な翻訳抑制は引き起こさないことがわかった。これらのことから、ANAC082とANAC0103は進化の過程において別のストレス種に応答するように機能が分かれ、ANAC103遺伝子はプロモーター領域の上流に小胞体ストレスに応答して転写を活性化するシス調節配列を獲得した一方、核小体ストレスに応答して翻訳を促進するためのuORFを失ったと考えられる。また、研究代表者のグループはこれまでに、非AUG開始型uORFを持つシロイヌナズナの遺伝子の中からポリアミンに応答して翻訳が制御されるものを見出し、その翻訳制御に非AUG開始型uORFとその下流のRNA二次構造が関与することを明らかにした。昨年度の解析から、特定のポリアミン分子種だけでなく様々なポリアミン分子種によってこの遺伝子の翻訳が抑制されることが示唆された。これらのことから、ポリアミンの正電荷がRNA二次構造に影響を与えることによって翻訳効率が低下する可能性が考えられる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Plant Molecular Biology
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