研究課題
本年度は以下の2項目を中心に解析を行った。1. RCBおよびプラスチドボディー(PB)の膜動態の解析:葉緑体のRCBを介したピースミールオートファジーの過程では、隔離膜が葉緑体表面の突出構造にとりつきくびれを生じさせ、最終的に小胞形成に至る様子が、隔離膜やオートファゴソームのマーカーであるGFP-ATG8を用いた解析で確認された。サイトゾルにプラスチドボディー(PB)を過剰蓄積するgfs9変異体においても、同種のマーカーであるRFP-ATG8がプラスチド表面の突出構造を覆うように局在していることが確認された。しかしながらgfs9変異体において形成後のほとんどのPBにはRFP-ATG8のシグナルは見られなかった。この結果は、gfs9においてプラスチドボディーはプラスチド本体から切り出される途中や、その直後はRFP-ATG8eでラベルされたオートファゴソーム膜に包まれているが、その後はオートファゴソーム膜が失われた状態で蓄積していることを示唆した。2.RCB経路におけるATG8アイソフォームの役割の解析:ATG8をa~dの4種類持つイネを材料に、ゲノム編集技術により各ATG8遺伝子をノックアウトさせた系統を複数作出した。さらに作出したATG8シングルノックアウト変異体を交配させ、ATG8ダブル及びトリプルノックアウト変異体を複数系統確保した。総ATG8タンパク質の蓄積に対して最も寄与が大きいのはATG8c遺伝子であった。一方、ATG8aシングルノックアウト、 ATG8bシングルノックアウト、 及びATG8abダブルノックアウトは、ATG8タンパク質の蓄積に対して影響を与えなかった。ATG8dについては、ATG8a~cと異なり、調べた限りの組織や時期においてタンパク質レベルでの発現が確認されなかった。
2: おおむね順調に進展している
ATG8ノックアウト変異体については、目的とするATG8a~dすべてについて確かな系統を複数確保することができた。
作出したATG8ノックアウト変異体におけるRCB経路発動の解析を進めて、論文化を目指す。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Plant Cell Physiol.
巻: 62 ページ: 1372-1386
10.1093/pcp/pcab084