研究課題/領域番号 |
19H02921
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村中 俊哉 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60342862)
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研究分担者 |
石本 政男 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 研究領域長 (20355134)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖転移酵素 / トリテルペノイド / グリチルリチン / セルロース合成酵素 / ダイズ / カンゾウ / 代謝工学 |
研究実績の概要 |
トリテルペノイドとして、グリチルレチン酸に二段階でグルクロン酸を転移するGuUGATが2016年にXu らにより報告された。これは、研究代表者らの初期スクリーニングでグルクロン酸転移活性が全く見られなかったものであったが、アミノ酸配列が一部異なっていた。そのためこの酵素遺伝子を人工合成するとともに、研究分担者がダイズから単離したGuUGATホモログについても、大腸菌発現系で検討した。その結果、いずれの酵素も、ソヤサポゲノールB、グリルレチン酸などのオレナン型トリテルペノイドアグリコンを基質としなかった。 一方、マメ科植物である、ウラルカンゾウ、ダイズ、タルウマゴヤシの遺伝子共発現解析の結果、機能未知の、セルロース合成酵素に類似した酵素群(Csl)が、オレナン型トリテルペノイドの糖転移に関わることが示唆された。そこで、酵母を用いた特性評価を行った結果、Cslが、オレナン型トリテルペノイドアグリコンのC-3位にUDP-グルクロン酸を転移する酵素であることを見出した。これまでトリテルペノイドにUDP糖を転移する酵素は、UDP糖依存型糖転移酵素(UDG)に分類される酵素群であると信じられてきたが、新規の糖転移酵素(Csl)が、UDP-グルクロン酸転移活性を有することが初めて明らかとなった。 さらに、これまでに、単離されたグリチルレチン酸モノグルクロニドにUDP-グルクロン酸を転移する酵素であるカンゾウ由来UGT73P12と、ダイズ、アズキ由来の4種の類似UGT酵素について、UDP-グルクロン酸転移活性の有無について酵母発現系を用いて調べた。その結果、UGTのグルクロン酸転移酵素活性が、収束進化を経て互いに独立して出現したことが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は当初の計画以上に進展している。 これまで、グリチルレチン酸等のオレナン型トリテルペノイドアグリコンのC-3位にグルクロン酸を転移する酵素遺伝子の単離を、過去10年あまり試みてきたが、どうしても単離することができなかった。 その間に中国のグループが、GuUGATがグリチルレチン酸に二段階でグルクロン酸を転移する酵素であると報告したが、にわかに信じ難かった。慎重に再現性試験を行った結果、GuUGATは、当該酵素ではないと結論づけた。 発想を転換し、遺伝子共発現解析と、より広義な糖転移酵素群に検索枠を広げた結果、これまで予想もつかなかった、Cslがオレナン型トリテルペノイドアグリコンのC-3位にグルクロン酸を転移する酵素である、画期的な成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
CysGTsがオレナン型トリテルペノイドアグリコンのC-3位にグルクロン酸を転移する酵素である、画期的な成果を得ることができた。今後Cslの糖ドナー、糖アクセプターについて、詳細に検討するとともに、細胞内局在生、出芽酵母を用いたグリチルリチン生合成再構成系についても検討する。
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備考 |
2019年度の研究成果を記載している。
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