研究課題/領域番号 |
19H02922
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
船戸 耕一 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (30379854)
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研究分担者 |
中の 三弥子 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (40397724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | GPIアンカー蛋白質 / ソーティング / 糖脂質 / リモデリング / 酵母 |
研究実績の概要 |
令和元年度の研究によって、GPI (glycosylphosphatidylinositol) アンカータンパク質のセラミドリモデリングがグリカンリモデリングの上位であることが分かった。また、GPIアンカーの2つ目のマンノースにエタノールアミンリン酸が付加されない場合には、セラミドリモデリングを介さないバイパス経路によりGPIアンカータンパク質が輸送されることが示された。そこで、令和2年度は、同様のバイパス経路による輸送がセラミドの合成を低下させた場合にも観察されるかどうか調べた。その結果、スフィンゴ脂質の合成の初期ステップを阻害する薬剤ミリオシン処理した細胞あるいは変異株lcb1-100で観察されるGPIアンカータンパク質の輸送障害がGPIアンカーのエタノールアミンリン酸の除去(Gpi7欠損)によって抑圧されることが明らかとなり、セラミドに富むドメイン依存的なGPIアンカータンパク質の輸送もグリカン構造を変化させることによってバイパスされることが分かった。また、各種二重変異株を用いた解析により、バイパス経路を介した輸送には、タンパク質にGPIがアンカーリングする必要があること、さらに、GPIアンカータンパク質の積荷受容体として知られるp24複合体もバイパス経路を介した輸送に必要であることが判明した。
GPIアンカータンパク質のリモデリングの生理的意義について、リモデリングに関与する遺伝子の破壊株を用いて解析したところ、野生株と比較してリモデリング異常株では液胞の数が多いことが分かり、液胞の構造維持にGPIアンカータンパク質のリモデリングが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画で提案していた課題、1)セラミドの合成を低下させた場合におけるGPIアンカータンパク質の輸送障害がGPIアンカーの2つ目のマンノースのエタノールアミンリン酸の除去によって抑圧されるか、2)バイパス経路を介した輸送にGPIアンカーが必要か、3)積荷受容体p24タンパク質複合体が必要か、4)GPIアンカータンパク質のリモデリングの生理的意義について、いずれも予定通り解析を行うことができた。従って、当初の計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
R2年度までの研究で、GPIアンカーの2つ目のマンノースにエタノールアミンリン酸が付加されない場合には、セラミドを必要としないバイパス経路によりGPIアンカータンパク質が輸送されることが示唆された。また、バイパス経路にはGPIアンカーと積荷受容体であるp24タンパク質複合体が必要であることも明らかになった。そこで、今後は、バイパス経路に必要なGPIアンカーの脂質部分の詳細について解析を行う。具体的には、セラミドリモデリングの上流で働く脂質リモデリング酵素、Bst1、Per1、Gup1とGPIアンカーの2つ目のマンノースにエタノールアミンリン酸を付加させるGpi7との二重変異株を作製し、その株におけるGPIアンカータンパク質の輸送を解析することによって、脂質リモデリングのどの過程までがバイパス経路に必要であるかを明らかにする。また、オルガネラの構造維持における脂質リモデリングの役割については、各オルガネラに局在する蛍光タンパク質を融合させたマーカータンパク質をリモデリング変異株に発現、あるいはオルガネラに局在する蛍光物質を細胞に加えて、オルガネラの形態や数の変化を蛍光顕微鏡により調べる。
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