研究課題
令和2年度の研究によって、GPIアンカータンパク質のセラミドを介さないバイパス経路にはGPIのタンパク質へのアンカリングが必要であることが分かった。そこで、令和3年度は、GPIアンカーの脂質リモデリング酵素Bst1、Per1、Gup1とGPIアンカーの2つ目のマンノースにエタノールアミンリン酸を付加させるGpi7との二重変異株を作製し、セラミドリモデリングの上流に位置するリモデリング反応がバイパス経路に必要であるかどうか調べた。その結果、Bst1、Per1、Gup1の破壊株で観察されるGPIアンカータンパク質の輸送障害がGpi7欠損によって抑圧されないことが明らかとなり、バイパス経路にはGup1までのリモデリング反応が必要であることが示された。また、昨年度の研究により、野生株と比較してリモデリング変異株では液胞の数が多いことが分かり、液胞の構造維持にGPIアンカータンパク質のリモデリングが重要な役割を果たしていることが示唆された。そこで本年度は、液胞以外のオルガネラに局在する蛍光タンパク質を融合させたマーカータンパク質を発現、あるいは蛍光物質を細胞に加えて、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、脂肪滴の形態や数の変化を調べた。その結果、リモデリング変異株でゴルジ体の数の有意な減少、ペルオキシソームや脂肪滴の数の有意な増加が観察された。このことから、GPIアンカータンパク質の脂質リモデリングは液胞の構造維持のみならず、ゴルジ体やペルオキシソーム、脂肪滴の形成にも深く関わっていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究実施計画で提案していた課題、1)脂質リモデリングがGPIアンカータンパク質のバイパス経路に必要であるかどうか、2)GPIアンカータンパク質のリモデリングの各オルガネラの数や形態維持における役割について、いずれも予定通り解析を行うことができた。従って、当初の計画通りに進んでいる。
GPIアンカー生合成に関与する遺伝子のほとんどは必須遺伝子である一方で、CWH43を含め脂質リモデリングに関与する遺伝子は全て非必須遺伝子であり、破壊しても酵母の生育は正常である。これは、CWH43と同じ機能をもつ重複遺伝子あるいは下流で機能する遺伝子が存在している可能性を示唆している。令和元年度の研究によって、セラミドリモデリングに関与するCWH43遺伝子の破壊株の表現型がGpi7欠損によって抑圧されることが分かった。従って、同様の遺伝子間相互作用を示す遺伝子の中からCWH43と類似の機能もしくは下流で働く遺伝子を探索し、GPI脂質リモデリングに関与する新規遺伝子の同定を目指す。
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