研究実績の概要 |
出芽酵母において、GPIアンカー生合成に関与する遺伝子のほとんどは必須遺伝子である一方で、セラミドリモデリング遺伝子CWH43を含め脂質リモデリングに関与する遺伝子は全て非必須遺伝子であり、破壊しても細胞の生育は正常である。これは、CWH43と同じ機能をもつ重複遺伝子あるいは下流で機能する遺伝子が存在している可能性を示唆している。令和元年度の研究によって、CWH43遺伝子の破壊株の表現型がGpi7欠損によって抑圧されること、つまりCWH43とGPI7の遺伝子間にpositive genetic interactionがあることが分かった。そこで、令和4年度は、同様の遺伝子間相互作用を示す遺伝子の中からCWH43と類似の機能もしくは下流で働く遺伝子を探索し、GPI脂質リモデリングに関与する新規遺伝子の同定を目指した。 公開されているバイオ情報により、GPI7とpositive genetic interactionを示す遺伝子が86種類見出された。その中には、ARV1, ERV25, TED1, CDC1, GPI11などのGPIの生合成やリモデリング、GPIアンカー型タンパク質の輸送に関与する遺伝子も含まれていた。また、小胞体に局在する遺伝子産物が28種類存在し、その中に機能未知の遺伝子が2種類、YJR118CとYNL181Wを見出すことができた。GPIの生合成やリモデリングに関与する遺伝子の変異株は、細胞壁のキチンと相互作用するカルコフロールホワイトに対して高感受性を示すことが知られているので、YJR118CとYNL181Wの変異株のカルコフロールホワイトに対する感受性を調べたところ、野生株と比較していずれも高感受性を示すことが分かり、それらの遺伝子がGPIの生合成もしくはリモデリングに関与している可能性が示唆された。
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