研究課題
細胞質に存在するN型糖鎖除去酵素NGLY1は、小胞体関連分解の過程で糖タンパク質から糖鎖を除去する。2012年にNGLY1の変異に起因して全身に重篤な症状を呈する稀少疾(NGLY1欠損症)が報告されているが、その発症機構は不明であり、治療法もない。また、NGLY1欠損症の動物モデルであるNgly1-KOマウスは胚性致死となる。私達はこれまで、細胞質に存在する糖鎖認識ユビキチンリガーゼの研究を行ってきた。偶然、全身に発現する糖鎖認識ユビキチンリガーゼ基質認識サブユニットFbs2の遺伝子欠損がNgly1-KOの胚性致死性を回避し、正常に生育することを見出している。すなわち、Ngly1-KOによる胚性致死の原因は、Fbs2の機能によるものであると考えられる。2020年度は、NGLY1-KO細胞において致死性を引き起こす主たるFbs2の基質である糖タンパク質NRF1がNgly1-KOマウス胚においてもユビキチン化を受けて蓄積すること、それがFbs2依存的であることを見出した。また、NRF1の不活性化変異体であっても糖鎖修飾を受けないNRF1の過剰発現でFbs2による細胞毒性を失うという新たな知見も得ている。NGLY1-KO HeLa細胞でFbs2発現によりユビキチン化が亢進するタンパク質の網羅的解析にも着手し、いくつかの基質候補タンパク質の同定を行った。
2: おおむね順調に進展している
マウス胚におけるFbs2における基質を同定できた。また、Fbs2の基質同定法を確立したため。
HeLa, HCT116, MEF以外でのNgly1-KO細胞を樹立し、網羅的にFbs2の基質の同定を行う。また、マウス胎仔でFbs2が高発現している臓器におけるFbs2の基質の同定を行う。
すべて 2020 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Methods Mol Biol.
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10.1007/978-1-0716-0430-4_22
Commun.Biol.
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http://www.igakuken.or.jp/protein/jpn/research/yoshida-team.html