研究課題
細胞質に存在するN型糖鎖除去酵素NGLY1は、小胞体関連分解の過程で糖タンパク質から糖鎖を除去する。2012年にNGLY1の変異に起因して全身に重篤な症状を呈する稀少疾患(NGLY1欠損症)が報告されているが、発症機構は不明であり、治療法もない。また、NGLY1欠損症の動物モデルであるNgly1ノックアウト(KO)マウスは胚性致死となる。研究代表者らはこれまで、細胞質に存在する糖鎖認識ユビキチンリガーゼの研究を行ってきた。研究の過程で偶然、全身に発現する糖鎖認識ユビキチンリガーゼの基質認識サブユニットFbs2の遺伝子欠損がNgly1-KOの胚性致死性を回避し、正常に生育することを見出した。すなわち、Ngly1遺伝子欠損による胚性致死の原因はFbs2の働きによるものであると考えられた。これまでに哺乳類細胞において、NGLY1欠損下ではFBS2の過剰発現により、プロテアソームの活性阻害を引き起こし、細胞死を起こすことを示している。また、プロテアソームの転写因子Nrf1がFbs2により異常なユビキチン化を受け、それが細胞死の原因であることを明らかとした。2021年度は、NGLY1-KO細胞においてFBS2によりユビキチン化されるタンパク質の網羅的解析を行った。予想外なことに、糖タンパク質のみならず、多様なタンパク質のユビキチン化が起こっていることが判明したが、これはプロテアソーム活性の阻害によるものと考えられた。また、Ngly1-KOマウスの胎生期ではユビキチン化をうけたNrf1が蓄積し、Ngly1:Fbs2-dKOではその蓄積が見られないことも明らかとした。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.igakuken.or.jp/protein/jpn/research/yoshida-team.html