研究課題/領域番号 |
19H02927
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有村 慎一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00396938)
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研究分担者 |
肥塚 信也 玉川大学, 農学部, 教授 (30433866)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
植物ミトコンドリアゲノム上には細胞質雄性不稔(cytoplasmic male sterility: CMS)を担う遺伝子が存在し,これを持つ植物はF1ハイブリッド品種の母株として育種と種子生産現場の両方で多用されている.現在約20種類のCMS原因候補遺伝子の配列が報告されているが,意外にもこれらは(近縁種以外では)互いに相同性を持たず,また各々の雄性不稔惹起の詳しい分子機構もいまだ多くが不明である.CMS研究停滞の理由の一つは,植物ミトコンドリアゲノム形質転換技術の不在が挙げられる.我々は最近植物ミトコンドリアのゲノム編集技術mitoTALEN法を開発し,標的遺伝子破壊に成功した(標的配列切断→周辺配列での相同組換え修復→標的遺伝子欠失とゲノム構造変化).本申請研究では,このmitoTALEN技術を基盤にして現在不可能な「標的配列への外来遺伝子導入/安定遺伝可能な形質転換」技術の開発を行う.また,導入配列の一つとして「異種のCMS遺伝子を(イネorf79をシロイヌナズナ・セイヨウナタネへ)移植し,雄性不稔現象の異種移植の可能性を検討する」ことでCMS分子機構解明と応用展開の基盤構築への貢献を目指す.本年は遺伝子導入母本シロイヌナズナとナタネへ導入するベクターの改良を行なった。これにより、より短い認識配列での設計が可能となり、また薬物誘導系による効率の良い標的遺伝子破壊のためのツールが得られた。現在も改良中である。二年目の後半にmitoTALEN法の改良についての原著論文、プロトコール論文、短い総説なども掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年コロナ禍ながら、ベクターの作製効率が上がっており、短時間に目標とする遺伝子発現ベクターの構築を行うことができた。また、ナタネ核への遺伝子(ベクター)導入も順調に行われており、実際のミトコンドリアDNA導入母本となる植物体が近く複数系統について複数個体ずつできる可能性が高い。一部カルスについて、DNAの導入の確認、並びにミトコンドリアゲノムの状態を確認しており、順調である。シロイヌナズナも薬剤誘導型mitoTALENベクターの改良型が完成し、これを導入した植物体が複数系統・複数個体確立しつつある。一部は国際共同研究を伴う試料使用の希望があり、重要な形質転換システムができたと考えている。また、mitoTALEN法の改良の内容は、昨年末に国際誌に掲載され、技術プロトコールとしての論文、並びにミトコンドリアゲノムを改変した時の植物/哺乳動物などとの比較についての短い報告も掲載が許諾されている。
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今後の研究の推進方策 |
前中盤2年間で開発制作してきた形質転換植物体(ナタネ、シロイヌナズナ)を材料に、ミトコンドリアゲノムを標的とした遺伝子導入/DNAをパーティクルガン法をメインに導入を行う。スクリーニングに必要な系はすでに検討/検証しており、これらを使用する予定である。また、共同研究ベースでペプチドを用いた植物ミトコンドリアへのDNA挿入も行う予定である、植物体部位として、カルスと地上部メリステムを予定している。改良型mitoTALEN法についての国際的な共同研究依頼が複数きており、できる範囲でなるべくベクター作製構築、供出、議論を行なっていく。最終年度も引き続き原著論文掲載を目指す。
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