研究課題/領域番号 |
19H02933
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
熊丸 敏博 九州大学, 農学研究院, 教授 (00284555)
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研究分担者 |
久保 貴彦 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00370148)
藤田 直子 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (90315599)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イネ / 種子 / 貯蔵タンパク質 / 突然変異 / 澱粉 |
研究実績の概要 |
1、プロラミンの小胞体内への蓄積機構解明 複数のCysR(cysteine rich)プロラミン分子を欠失するesp3 変異の原因となる候補遺伝子を特定した。esp3系統と野生型との交雑F2個体の自殖種子を用いて約50個体のesp3ホモF2個体を選抜した。これらのesp3ホモ個体の葉身から抽出したDNAを混合したバルクDNAを次世代シークエンサーによって解読し、MutMap法により連関解析を行った。その結果、SNP-indexが1となる領域を染色体4と染色体11上に検出した。この染色体11上の領域は、以前に連鎖マーカーを用いて構築したesp3遺伝子連鎖地図における候補領域と一致した。SNP-indexが1となる染色体領域に5個の予測遺伝子を検出した。そのうちの2遺伝子について、esp3変異体においてアミノ酸置換、もしくはスプライシングサイトでの塩基置換が認められ、これらをESP3候補遺伝子とした。 2、グルテリン前駆体の小胞体からの小胞輸送機構解明 グルテリン前駆体を多量に蓄積する突然変異であるGlup1及びglup7の原因遺伝子同定のために各変異体と野生型との交雑F2集団を圃場で栽培し、同個体の葉と自殖種子を採取した。今後、MutMap法を用いて両遺伝子の染色体上の位置を推定する。 3、小胞体タンパク質と澱粉合成代謝制御との関連性解明 グルテリン前駆体を多量に蓄積するglup2、glup3、glup6種子における澱粉合成関連酵素を解析した。登熟種子から抽出したタンパク質を用いてNative-PAGEによるSS、BE、DBEの活性染色、完熟種子から抽出したタンパク質を用いてSS、BE、ISA、PUL,Pho特異抗体によるウエスタン分析によってタンパク質量を解析した。いずれの系統においても澱粉合成関連酵素の活性と量は野生型と大差なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、プロラミンの小胞体内への蓄積機構解明 esp3 変異の原因となる候補遺伝子を2つに絞るこむことができた。相補性検定によって遺伝子を特定できる可能性が高い。 2、グルテリン前駆体の小胞体からの小胞輸送機構解明 Glup1及びglup7変異体については、解析のための材料を準備することができた。今後MutMap法を用いて遺伝子の候補領域を特定することが期待される。 3、小胞体タンパク質と澱粉合成代謝制御との関連性解明 glup2変異体、glup3変異体、glup6変異体種子における澱粉合成関連酵素の活性とタンパク質量は野生型と大差なかったものの、種子は粉質状を示していることから、澱粉に何らかの変化が生じている可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1、プロラミンの小胞体内への蓄積機構解明 前年度特定したesp3 変異の原因となる候補遺伝子による相補性検定を実施する。 2、グルテリン前駆体の小胞体からの小胞輸送機構解明 グルテリン前駆体の小胞体からの輸出に関わる新奇小胞体タンパク質の同定のために、小胞体内にグルテリン前駆体を多量に蓄積するglup7変異体について、MutMap法とDNAマーカー法を並行して原因遺伝子を明らかにする。 3、小胞体タンパク質と澱粉合成代謝制御との関連性解明 glup2変異体、glup3変異体、glup6変異体について、前年度に引き続き種子澱粉の性質を解析する。本年度は新たにesp1変異体、esp2変異体、esp3変異体の解析を進める。esp1変異体は複数種のCysP(cysteine poor)プロラミン分子を欠失した変異体であり、翻訳終結因子eRF1の機能を欠失する。esp2変異体はグルテリン前駆体を小胞体内に集積する変異体であり、protein disulfide isomerase like 1-1の機能を欠失する。esp3変異体は前述のとおりである。登熟種子における澱粉合成関連酵素 (基質合成酵素、澱粉合成酵素、澱粉枝作り酵素、澱粉枝切り酵素等) の活性とタンパク質発現を、それぞれNative-PAGE活性染色法とウエスタン法を用いて解析する。イネの澱粉合成代謝制御における小胞体タンパク質の役割の解明のために、野生型と各変異体の登熟種子を用いて、メタボローム解析(CE-TOF/MS解析等)及びトランスクリプトーム解析(マイクロアレイ解析等)を行い、澱粉代謝関連遺伝子群・酵素群等の発現変動を網羅的に解析する。
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