研究課題/領域番号 |
19H02935
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松岡 由浩 神戸大学, 農学研究科, 教授 (80264688)
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研究分担者 |
FAWCETT JEFFREY 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 上級研究員 (50727394)
岡田 萌子 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (20913289)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヘテロシス固定 / 2n配偶子 / 単為生殖 |
研究実績の概要 |
食糧生産を巡る状況が厳しさを増す今日、「いかにしてヘテロシス(雑種強勢)が分離しない永久ハイブリッド品種を作るか」は育種科学の核心的課題である。アポミクシス(無融合種子形成)は、クローン種子を形成することにより、ヘテロシスを固定する。しかし、パンコムギでは、アポミクシスは知られていない。本研究では、コムギ系統を交配し、アポミクシス形質を獲得してクローン胚を形成するコムギを作出することを目的とする。さらに、ゲノム・トランスクリプトーム解析により、アポミクシス形質発現に関わるコムギ遺伝子を同定することを目指す。上記の目的を達成するために実施した実験等により今年度は次の成果を得た。 ・アポミクシスは、雌性の非還元配偶子(減数分裂の回避により生じる配偶子。体細胞と同じ数の染色体をもつ)が単為生殖して発現する。今年度は、非還元配偶子を形成するコムギ系統LDNと単為生殖するコムギ系統 (Var)-Salmonを交配して雑種(F1)に、LDNを交配して得た(Var)-Salmon-LDN_F1BC2、にLDNを1回戻し交配し、(Var)-Salmon-LDN_F1BC3を得た。 ・アポミクシス形質発現に関わる遺伝子アリルをもつタルホコムギ系統のゲノム配列を新規に取得するため、これまでに取得した次世代シークエンサー解析によるロングリードをアッセンブルし、このタルホコムギの染色体スケールの新規ゲノム配列を構築した。 ・単為生殖するコムギ系統(Kot)-Salmonの幼穂由来からRNAを用いてRNA-seq解析から得られたデータを解析し、このコムギ系統に特異的に発現する遺伝子の探索を進めた。 ・海外共同研究者が来学し、単為生殖を発現する未受粉完熟小花の顕微鏡を行うための切片を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、コムギ系統LDNと単為生殖するコムギ系統 (Var)-Salmonを交配して得た雑種(Var)-SalmonF1BC2_LDNにLDNを戻し交配し、(Var)-Salmon-LDN_F1BC3を得ることができた。アポミクシス形質発現に関わる遺伝子アリルをもつタルホコムギ系統の新規ゲノム解析と単為生殖するコムギ系統(Kot)-Salmonの幼穂由来RNAを用いたRNA-seq解析については、結果の取りまとめにやや遅れが生じている。単為生殖を発現するコムギ系統の未受粉完熟小花の顕微鏡で観察のための切片作成については、海外共同研究者が来学し、これを実施できた。これらにより、本研究は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
・非還元配偶子を形成するコムギ系統LDNと単為生殖するコムギ系統 (Var)-Salmonを交配して作出した雑種(F1)にLDNを3回戻し交配した系統((Var)-Salmon-LDN_F1BC3)栽培・育成し、LDNを戻し交配して、雑種((Var)-Salmon-LDN_F1BC4)を得る。また、一部の雑種個体については、タルホコムギとの交配を行う。 ・新規に構築した染色体スケールのタルホコムギ系統ゲノム配列とパンコムギDゲノム及び他のタルホコムギ・ゲノムと比較し、アポミクシス形質発現に関わる遺伝子アリルをもつタルホコムギの系統進化的位置付けを解析する ・単為生殖するコムギ系統(Kot)-Salmonの幼穂由来からRNAを用いてRNA-seq解析から得られたデータを解析し、このコムギ系統に特異的に発現する遺伝子の探索を進める。 ・単為生殖を発現する未受粉完熟小花の切片を顕微鏡観察し、胚の形態を解析する。
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