品種および窒素施肥による窒素固定活性の変化と積算窒素固定量を推定するため、多収インディカ品種北陸193号とジャポニカ標準品種日本晴を圃場において異なる窒素施肥条件で栽培し、茎部を含む各部位のARAを経時的に調査した。その結果、いずれの品種も面積当たりの窒素固定活性は出穂期~成熟期で最も高くなり、また窒素施肥による積算窒素固定推定量の明確な違いは見られなかった。また全窒素吸収量に占める積算窒素固定推定量の割合に2品種間の大きな差はなかった。茎部のARA活性は植物体中の糖濃度と関係が強かった。 茎部で最も高い活性が認められた茎下部について、有効な基質を推定するために、磨砕物に種々の炭素基質(糖、有機酸、アミノ酸、メタン)を添加した場合のARAの促進効果を予備的に解析した。その結果、スクロースで最も促進効果が大きく、メタンによっても促進効果がみられ、糖資化性菌やメタン酸化菌の寄与が示唆された。窒素含量の高いアミノ酸では促進効果は小さくC/Nが高い基質で促進が大きい可能性が示唆された。さらに15N2を用いて微細部位別の窒素固定活性の測定を行い、茎下部の外側で高いことが明らかになりARAでの傾向と合致した。ただしメタンを基質とする固定能についてなどARAとの相違をさらに検討する必要も示唆された。 また茎部ARAの品種差異に関与する遺伝要因を明らかにするために遊離糖を高集積し、ARAが高い傾向が認められたアフリカイネ品種についてアジアイネを遺伝的背景とする染色体置換系統を栽培し、茎部のARAと遊離糖の変異を予備的に調査した。
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