研究課題/領域番号 |
19H02948
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
牛島 幸一郎 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20379720)
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研究分担者 |
門田 有希 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (30646089)
中野 龍平 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70294444)
池田 和生 山形大学, 農学部, 准教授 (80555269)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エチレン生合成 / 果実軟化 / メロン / GWAS |
研究実績の概要 |
メロンは一般に急激な呼吸量の増加とともにエチレンの生成と果実軟化を示すクライマクテリック型果実であるが,実際にはエチレンを感受しないノンクライマクテリック型果実や,エチレン合成量が少ない,軟化速度が遅いなど,様々な成熟様相を示す品種が存在する.メロン品種のハネデュとB2は共に棚持ち性の良い品種であるが,前者はエチレン生合成,後者は果肉軟化に変異が生じている. ハネデュのエチレン合成能については,前年度に典型的なクライマクテリック型果実のシャランテとのF2集団でGWAS解析を行い,8番染色体の約22Mbp付近にエチレン生合成に関連する遺伝子座(ET8)を見出した.また,R2年度に他のグループからQTL解析から同じ8番染色体の10Mbp付近にエチレン生合成関連の遺伝子座(ETHQV8.1,以下QV8.1)が報告されている.これら2つの遺伝子座について遺伝子の配列変異と発現量の変異を,DNA-seqとRNA-seq解析から網羅的に解析した.その結果,発現量が異なる遺伝子は2つの遺伝子座で合計36遺伝子,アミノ酸置換が生じている遺伝子は71遺伝であった.合計で96遺伝子と非常に多く,何らかの形で更に絞り込み必要があると考えられた. B2については春系3号との交雑のF5集団の解析を行った.その結果,軟化遅延個体と早期軟化個体が1:1で分離した.このF5集団はF4で軟化遅延,早期軟化のホモ系統どうしの交雑を行って得られたものであると想定しており,本年度は形質の分離が見られてないと期待していた.したがって,この相違はF4で選抜した軟化遅延個体の遺伝子型がホモではなくヘテロであったためと考えられる.想定とは異なるがGWAS解析の事を考慮すると,このように形質が分離する集団が必要であり,R3年度の解析に向けて非常に良い材料が得られたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハネデュのエチレン生合成については,8番染色体の候補領域の遺伝子の配列と発現量の変異を全てリストアップしている.幾つかのエチレン合成・信号伝達遺伝子に変異が見出された.直ちにハネデュのエチレン合成不全につながるとは考えにくいものであったが,R3の解析に向けた基礎データが得られている. B2と春3系のF5集団では,予想に反して軟化形質が分離した.これは優性ホモと推測された軟化遅延系統が,実際にはヘテロであったためと考えられる.このことはR3年度予定しているGWAS解析に対してとくに悪影響を及ぼすものではなく,研究自体は順調に推移していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
ハネデュのエチレン生合成不全に関しては8番染色体の2つの領域の配列と発現量の変異を特定しリスト化することが出来た.しかし,非常の多くの候補となり得る遺伝子が存在し,これだけでは十分に絞り込むことが出来ない.そこで,R3年では深層学習によるエチレン合成関連のcis-elementを有する遺伝子の解析を行いさらなる絞り込みを行う予定である. B2の解析についてはF5で形質が分離したと言うことは,GWASための分離集団を既に得ていると言うことになる.そこで,再度同じ集団の種子を播種しGWAS解析に供試する.また,F6も採取しており同時に栽培する.F5の再試とあわせて遺伝様式の再確認と,GWAS解析を行う予定である.
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