研究実績の概要 |
Pseudomonas syringaeなど多くの植物病原細菌では菌体密度感知分子としてN-アシルホモセリンラクトン(AHL)を生産し、AHLの濃度により細菌密度を検知し、病原力関連遺伝子を発現すると言われているが、本研究代表者は、P. syringae pv. tomato DC3000 (PtoDC3000) など多くのP. syringae分離株のAHL合成酵素遺伝子やAHL結合性転写因子遺伝子が変異しておりAHLを生産しないことから、AHLを介しない新たな菌体密度感知システムが存在していると推察した。これまでに高菌体密度のPtoDC3000はタンパク質をコードしないsmall RNAであるrsmXやrsmYの発現を高めること、これらの発現はGacS/GacA二成分制御系の支配下にあることを明らかにした。PtoDC3000のrsmX1, rsmX2, rsmX3, rsmX4, rsmX5, rsmY, rsmZのそれぞれを欠損したシングル変異株を作出して運動能、病原力などを比較解析した。その結果、rsmX3, rsmX4, rsmX5の各変異株ではswimming運動能、バイオフィルム形性能、GABA利用能、病原力について若干低下する傾向が見られた。また、AHLを生産するPtoDC3000を作出したが、シロイヌナズナに対する病原力の低下は観察されなかった。また、GacS/GacA二成分制御系の制御に関わることが知られているretS, ladSの欠損変異株を作出したので、その表現型を解析しているところである。rsmX2のプロモーターにレポーター遺伝子を連結させたトランスポゾンを転移させてrsmX2の発現が低下する変異株のスクリーニングを行なったが、これまでのところ明確に低下した変異株は得られていない。
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