研究課題/領域番号 |
19H02959
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹田 篤史 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60560779)
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研究分担者 |
海道 真典 京都大学, 農学研究科, 助教 (20314247)
松村 浩由 立命館大学, 生命科学部, 教授 (30324809)
岩崎 信太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (80611441)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植物ウイルス / RNAサイレンシング / RNAサイレンシングの活性化 / ウイルス複製 / RNAサイレンシングサプレッサー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ウイルス感染時に認められるRNAサイレンシング関連遺伝子群の発現が活性化される機構を明らかにすることである。令和元年度には、主にAGO遺伝子の発現誘導に着目して以下の実験を行った。 (1)AGO遺伝子の発現誘導に関与するウイルス因子に関して:複製酵素成分にアミノ酸置換を導入し、複製能を欠損させた変異体を用いた実験から、ウイルスの複製がAGO遺伝子の発現誘導に必要であることが強く示唆された。また、プロトプラストを用いた実験から、AGOの発現誘導はウイルス接種後1日以内に起こることが示唆された。他方、AGOプロモーター制御下にホタルルシフェラーゼ遺伝子を挿入したプラスミドの作出を完了した。この作出と並行して、自己発光するルシフェラーゼのクローニングも開始した。 (2)AGO/DCL発現植物の作出に関して:プロモーターとターミネーターの領域も含めてAGO遺伝子のクローニングを完了したが、DCLのクローニングを完了できなかった。引続き、DCL遺伝子のクローニングに取り組んでいる。 (3)ウイルスRSSの機能解析に関して:ウイルスRSSの機能解析を行うための準備として10種類のRSSを用意した。16c植物を用いてこれらのRSS活性を確認した。(2)の組換え植物を作出でき次第、RSSアッセイを行える状態である。 (4)AGO遺伝子の発現誘導の一般性検証に関して:AGO遺伝子の発現誘導の一般性を検証するために、複数のウイルスをアグロインフィルトレーションを介して感染させる系を構築している。今年度は、Carnation ringspot virusおよびTobacco mosaic virusの感染系を確立することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルス側のAGO発現誘導因子の絞り込みは、順調に進んでいる。次年度中に一定の成果として発表できる見込みである。唯一プロトプラストの系が安定しない問題に直面しているが、プロトコールを改善しつつ反復することで克服していきたいと考えている。各種クローニングおよびゲノム編集は概ね順調に進行している。サイズが大きなDCL遺伝子のクローニングに苦戦しているが、次年度中には完了できる予定である。 遺伝学的な因子探索に関しては、自己発光するルシフェラーゼの利用を追加で検討し始めたため、予定より少々遅れ気味である。しかし、本系をうまく活用できれば、スクリーニングにかかる時間を短縮でき、経費も大幅に節約できる見込みである。引続き、系の確立に取り組んで行く。 RSSの準備は、順調に進んでいる。さらに作用点が異なると想定されている5つほどのRSSを準備する計画である。ウイルス感染性クローンの準備も順調に推移している。さらに別の2種のウイルスについても感染系を確立すべく、準備を進めている。 上述の通り、令和元年度の研究は、概ね順調に進展した。以上より、「(2)おおむね順調に進展している」の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の進捗状況を踏まえて、令和2年度には、以下の実験を行う計画である。なお、コロナウイルスの影響により、既に実験できない期間が生じている。下記の実験を可能な限り進めていく予定であるが、大きな遅れが見込まれる。 (1)AGO遺伝子の発現誘導に関与するウイルス因子に関して、プロトプラストを用いた実験を完了させ、投稿論文としてまとめる。また、自己発光するルシフェラーゼ遺伝子の植物における機能性を確認した上で、組換え植物の作出に取り掛かる。安定的なプロトプラスト調製ができるようになり次第、Robosome profilingに取り掛かる。プロトプラスト調製の大規模化に手間取った場合、培養細胞の導入も検討する。大腸菌での複製酵素タンパク質の大量発現に苦戦しているので、他の真核生物系の宿主でも大量発現を試みる予定である。また、大腸菌において、同時に宿主因子を発現させて共精製する実験も行う予定である。 (2)AGO/DCL発現植物の作出に関して、DCL遺伝子のクローニングを完了させ、組換え植物の作出に取りかかる予定である。作出完了次第、ウイルス感染性実験と、ウイルスRSSの機能解析を行う予定である。 (3)ウイルスRSSの機能解析に関して、さらに5種類のRSSを用意する。16c植物を用いて、これらのRSS活性を確認する。(2)の組換え植物を確立でき次第、機能解析に利用していく。 (4)AGO遺伝子の発現誘導の一般性検証に関して、さらにもう2種類のウイルスについて、アグロインフィルトレーションを介して感染させる系を構築する。順次、アグロインフィルトレーションを行い、RT-qPCRを実施することで、AGO遺伝子の発現誘導が一般的かどうかを検証していく。
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