研究課題
社会性種のハクウンボクハナフシアブラムシにおける母性効果を介した無翅モルフ、有翅モルフ、兵隊階級の分化機構を明らかにするために、実験室内で親・子世代をさまざまな環境条件下(温度:高温/低温、日長:長日/短日、アブラムシ密度:低密度/高密度)で飼育して、アブラムシの母親が経験した環境条件が、母性効果として子世代の表現型に反映されるかを明らかにした。また、野外でアブラムシゴールの生理状態の変化をリモートセンシング手法を用いてモニタリングするとともに、各時期に野外で採取したゴールより得られたアブラムシ成虫の頭部と腹部からm-RNAを抽出し、RNA-seqで得られた遺伝子発現データベースの解析を行なった。得られた結果は以下のとおりである。(1) 兵隊階級の分化は低温・長日・高密度の条件で誘導され、特に密度情報の母性効果が重要であった。(2) 有翅モルフの分化は高温・短日・高密度の条件で誘導され、特に日長情報の母性効果が重要であった。(3) 野外調査から、ゴール内でアブラムシ個体数密度が急増する盛夏にゴールは生理状態が悪化し、葉緑素量の減少および光合成能の低下が見られた。(4) ゴールの生理状態の悪化に伴う栄養状態の低下が、有翅モルフの分化を引き起こす可能性が高いことがわかった。(5) 成虫頭部でのIGF様ペプチドの遺伝子発現量が、兵隊や有翅モルフの分化制御に関わる母性由来の情報伝達物質の候補の一つであり、環境因子を特定し、遺伝子発現量と比率の相関を調べる必要があることが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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