研究課題/領域番号 |
19H02972
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
陰山 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (60401212)
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研究分担者 |
佐原 健 岩手大学, 農学部, 教授 (30241368)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生殖操作 / 細胞内共生細菌 / ボルバキア |
研究実績の概要 |
・7月に他の研究機関の研究者とともに種子島を訪れ、キタキチョウの採集および野外調査を行い、分子実験に必要な材料を確保することができた(ただし、染色体観察に必要なサンプル量は満たしていなかった)。 ・Wolbachiaによる全メス系統の幼虫期に抗生物質を投与して性決定遺伝子であるdoublesex (dsx)遺伝子のスプライシングパターンがメス型からオス型に変化する現象について、反復をとってコントロールと合わせてサンプリングを行い、トランスクリプトーム解析(RNA-seq)を行った。 ・キタキチョウから樹立した培養細胞を用いて、ボルバキアがdsxのスプライシングパターンをオス型からメス型に変化させることを明確に示すことができた。 ・11月にローザンズ大学(スイス)を訪問し、キタキチョウをメインとしたWolbachiaの生殖操作に関するセミナーおよび学術交流を行った。アリなどでみられるゲノム消滅に関する貴重な情報を得ることができた。また、そのときに著名な研究者から、キタキチョウにおける性染色体の伝達阻害メカニズムに関する発生学的説明として、「祖父由来ゲノム消滅説」の可能性を指摘された。帰国後、その可能性を検証するための交配実験を行い、実験に必要なサンプルを取得することができた。 ・カブラハバチにキタキチョウのWolbachiaをインジェクションすることにより次世代の胚発生が起きなくなる現象(非宿主の発生阻害)について、産卵前のメスをサンプリングし、トランスクリプトーム解析(RNA-seq)を行った。ゲノムが失われている可能性を考慮した上でコントロールと比較して発現量の違いを調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料の都合上、染色体観察が保留となっているが、培養細胞の実験が予想以上にうまくいったり、非宿主の発生阻害の実験を前倒しで行うことができたり、現象に対する新たな仮説を検証できることになるなど、全体としてみると順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナの関係で採集がいつ可能になるのか不明だが、種子島での採集を行い、十分な材料が揃い次第、染色体観察を進める。また、昨年度取得したトランスクリプトームデータの解析を進めるとともに他の分子実験については予定通り遂行する。
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