• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実績報告書

生物群集における共進化過程に着目した生態系復元の実証研究

研究課題

研究課題/領域番号 19H02974
研究機関北海道大学

研究代表者

内海 俊介  北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10642019)

研究分担者 門脇 浩明  京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (30643548)
吉田 俊也  北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60312401)
小林 真  北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60719798)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード生態ー進化フィードバック / 森林再生 / 遺伝的多様性 / 生物多様性ー生態系機能
研究実績の概要

生態系復元実験のために、北海道大学雨龍研究林・中川研究林・天塩研究林の3地域において、大規模な山腹崩壊を模した実験地を造成することができた。本年は、その実験地における研究を開始することができた。実験地は、各林に35m四方のサイトが5か所で、合計15か所である。
まず、北海道の異なる地域から昨年度中に集めておいた樹木の種子(ケヤマハンノキ・ダケカンバ・イタヤカエデ・トドマツ)を用いて、2021年6月に播種を行った。このとき、遺伝的多様性の操作(種子の由来地域における単独と混合)と種多様性の操作(単種と4種混合)のすべての組み合わせで処理区を設定し(20処理区)、各サイトに3つの反復を設けた。すなわち、合計900区画の播種実験を行った。秋にまず最初の発芽状況の調査を行った。
次に、大規模撹乱に対する節足動物群集の新たな形成過程を実験的に検証するため、上記の実験地を活用して、地上徘徊性昆虫の調査を行った。実験地を山腹崩壊処理区とし、隣接する天然林・人工林を対照区として、地上徘徊性昆虫群集の撹乱応答を比較した。その結果、処理区と対照区では、群集の種組成がまったく異なることが分かった。さらに、処理区では各サイト間での組成の変異性(β多様性)が対照区と比較してきわめて高いことが分かった。すなわち、大規模撹乱が生じた際には、森林内に生息する昆虫種は定着できず、周囲の撹乱地をハビタットとするような種が移入すること、その移入には確率性も大きく貢献していること、という過程を通して群集が形成されることが分かった。そしてこの移入が機能しない場合には、多様性回復は遅くなることが示唆された。
さらに、植物上の陸域昆虫群集について環境DNAによる調査を行った。それにより、環境DNAによって、植物上の陸域昆虫群集の種組成や多様性を調べることが可能であることが新たない明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

播種実験の開始、環境DNAや昆虫群集の解析など、それぞれ計画通りに進行している。

今後の研究の推進方策

今後は以下のように推進する。
1)種多様性と遺伝的多様性のレベルを操作した播種実験から発芽した集団の追跡調査を行っていく。集団の個体数や空間分布とともに、遺伝構造についてゲノミクスをもちいた解析によって調べていく。さらに、その過程が、上位栄養段階の昆虫種に与える生態学的・進化学的インパクトについても明らかにする研究を行う。新たに定着する昆虫群集の調査を進め、機能形質分布の評価を行うとともに、対象種を絞りつつDNAを収集する。昆虫種についてもゲノム解析を進め、遺伝的多様性や遺伝構成の評価を行う。
2)昆虫群集に対する環境DNAを活用したメタバーコーディングをさらに展開し、種多様性のみならず遺伝的多様性も含めた、階層的な多様性構造の解明の実現を目指す。
3)これまでに得られている成果に関する論文執筆と投稿をおこなう。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件)

  • [雑誌論文] Biology of actinorhizal symbiosis from genomics to ecology: the 20th International Meeting on <i>Frankia</i> and Actinorhizal Plants2022

    • 著者名/発表者名
      Kucho Ken-Ichi、Tobita Hiroyuki、Utsumi Shunsuke、Uchiumi Toshiki、Yamanaka Takashi
    • 雑誌名

      Journal of Forest Research

      巻: 0 ページ: 1~4

    • DOI

      10.1080/13416979.2022.2036417

    • 査読あり
  • [学会発表] 山腹崩壊は徘徊性昆虫群集をガラリと変える?~大規模実験による検証~2022

    • 著者名/発表者名
      古澤惇平、小林真、内海俊介
    • 学会等名
      第69回日本生態学会大会
  • [学会発表] 森林再生場に影響を与えるシカ食害と植物種多様性:環境DNAによって評価する2022

    • 著者名/発表者名
      仲野友太、南雲優哉、米谷衣代、内海俊介
    • 学会等名
      第69回日本生態学会大会
  • [学会発表] 石狩浜海岸林における潜葉性昆虫群集の時空間動態解析2022

    • 著者名/発表者名
      松浦輝、内海俊介
    • 学会等名
      第69回日本生態学会大会
  • [学会発表] 環境DNA手法で植食性昆虫の集団の遺伝子頻度は推定できるのか?2022

    • 著者名/発表者名
      嶋本直紀、米谷衣代、内海俊介
    • 学会等名
      第69回日本生態学会大会
  • [学会発表] 野外観測で観測するハムシの迅速進化と群集動態のフィードバック・ループ2022

    • 著者名/発表者名
      南雲優哉、仲野友太、波多腰純也、内海俊介
    • 学会等名
      第69回日本生態学会大会
  • [学会発表] 生態系機能に対する種多様性と種内多様性の統合効果2022

    • 著者名/発表者名
      内海俊介
    • 学会等名
      第69回日本生態学会大会
  • [学会発表] 動物ー植物相互作用の野外調査法入門2021

    • 著者名/発表者名
      内海俊介
    • 学会等名
      第37回個体群生態学会
  • [学会発表] 山腹崩壊は徘徊性昆虫群集をガラリと変える?~大規模実験による検証~2021

    • 著者名/発表者名
      古澤惇平、小林真、内海俊介
    • 学会等名
      第37回個体群生態学会
  • [学会発表] 陸生節足動物の多様性は環境DNAでモニタリングできるか:森林再生場への活用2021

    • 著者名/発表者名
      仲野友太、南雲優哉、米谷衣代、内海俊介
    • 学会等名
      第37回個体群生態学会
  • [学会発表] 野外で観測するハムシの迅速進化と群集動態のフィードバック・ループ2021

    • 著者名/発表者名
      南雲優哉、仲野友太、波多腰純也、内海俊介
    • 学会等名
      第37回個体群生態学会
  • [学会発表] 陸生植食性昆虫の環境 DNA 検出系の開発:ヤナギルリハムシの摂食実験アプローチ2021

    • 著者名/発表者名
      嶋本直紀、米谷衣代、内海俊介
    • 学会等名
      第37回個体群生態学会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi