研究課題/領域番号 |
19H02976
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
堀之内 正博 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (30346374)
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研究分担者 |
加納 光樹 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 准教授 (00527723)
山口 敦子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (10310658)
今 孝悦 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40626868)
中村 洋平 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (60530483)
川井田 俊 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (60743581)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジュゴン / 沿岸浅海域 / 潮間帯 / 生物多様性 / 魚類 / 大型無脊椎動物 / 仔稚 / 生残 |
研究実績の概要 |
本研究課題は(亜)熱帯に生息する絶滅危惧種ジュゴンが潮間帯を含む沿岸域の海草藻場に形成するジュゴントレイル(食痕)を利用する動物群集の構造を精査することなどにより、ジュゴンが沿岸域の高い生物多様性や漁業対象種も含む様々な種の資源量の維持等にどのように寄与しているのか解明していくことを目的とする。 本研究期間は主に予備的な調査を行った。すなわち、タイ南部沿岸域の潮間帯において雨季後半から乾季にHalophila ovalis海草藻場(以下、海草藻場)内に形成されたジュゴントレイル(トレイル)およびその周囲のH. ovalisが密生した場所(海草藻場)、平坦な裸地に存在するエイ類の食痕(エイ食痕)およびその周囲の裸地(砂泥地)にどのような魚類あるいは大型無脊椎動物(エビ・カニ類)が出現するか、可能な限りの頻度で干潮時と満潮時に採集あるいは潜水目視観察により調べた。また、サブテーマとして潮間帯海草藻場が魚類に果たす機能をフィリピンにおいて水中ビデオシステムを用いて調べた。ここでは前者の結果についてのみ述べる。 干潮時には、海水が貯留しているトレイルに様々な魚類および大型甲殻類が出現し、その中には地域漁業の対象種なども含まれていた(キス類やイシガニ類、ガザミ類など)。また、同様に海水が貯留しているエイ食痕にも様々な魚介類が出現した。それらの多くは稚魚などの身体の小さな個体であった。一方、干出している海草藻場および砂泥地には魚類は出現せず、エビ・カニ類も同時間帯にトレイルおよびエイ食痕でみられるものとは異なるタイプが主に出現した。しかし、干潮時にトレイルやエイ食痕に出現した魚類やエビ・カニ類の多くは、潮が上がるとこれらのハビタットでは確認されなくなった。これらの現象から、ジュゴントレイルやエイ食痕は、干潮時に様々な魚介類が利用する重要なマイクロハビタットとなっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
タイ国における調査許可のシステムが大幅に変更になった。すなわち、National Research Council of ThailandおよびDepartment of National Parks, Wildlife and Plant Conservationからの認可に加え、タイ国の法律“ANIMALS FOR SCIENTIFIC PURPOSES ACT”を学習した上で試験を受け“Animal Use License”を取得することを求められた。試験には一度で合格したものの、手続きを中々先に進めてもらえず、結局、調査許可が正式におりたのは2020年1月29日であった。 さらにその後、日本での新型コロナ感染者数拡大がタイでも大々的に報じられたため、渡航したもののカウンターパート在籍の大学構内立ち入りおよびゲストハウス利用拒否や入国後2週間自主隔離の要求などのため、思ったように調査を進めることが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主調査地はタイ南部である。しかし現在、タイは新型コロナの世界的流行を受け、研究者を含む一般の外国人の入国を認めていない。そのため、2020年1月末にようやく許可がおりたものの、現在は渡航しての調査が一切できない状態である。規制が解除され次第、渡航して調査を行う予定ではある。が、一体いつ解除されるのか、皆目見当がつかないのが現状である。本年度後半までにタイへの渡航が可能になった場合、即渡航して出来る限りの頻度で調査を行い、基礎的な知見の蓄積に努める。本年度中の渡航が不可能なことが判明した場合、最近ジュゴンの存在が示唆されている先島諸島で調査を行うことも検討中である。
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