研究実績の概要 |
(1)媒島の貧栄養土壌に 炭酸カルシウム (C),リン酸(P), 硝酸カリウム(N)を添加または非添加した計8処理 (Control, P, N, P+N, C, C+P, C+N, C+P+N)の土壌条件でアカギとギンネム実生の栽培実験を行った。アカギ、ギンネムともに酸性で貧栄養の土壌条件では実生の成長が小さく、富栄養の土壌条件では土壌pHに関係なく成長量が大きかった。特にアカギは強酸性でPNの豊富な土壌条件(PN)で最も成長が促進された。 (2)2021年9月に父島において採取したモクマオウの結実果実から種子をとりだし発芽テストを実施した。濃硫酸30分処理では50%以上の発芽率であった。無処理(脱イオン水)での播種後10日目の発芽率は24%であった。 (3)栽培後の植物体の葉、茎、根それぞれについてリンとカリウムの含有量を測定した。ギンネム、アカギともに強酸性で富栄養なPNの土壌で最もリンの含有量が高くなる傾向があった。 (4)ギンネムとモクマオウは、土壌中可給態リン酸含量が低く、土壌酸性が弱い土壌に分布していた。媒島にはギンネムが分布しているものの酸性の強い場所には広がっていなかった。モクマオウは、海岸沿いの崖など土層の薄い場所にも分布することから、養分吸収能力が高く、貧栄養的な環境でも生育できると考えられた。 (5)一定期間降雨がなかった期間(乾燥期間)における表層土壌の体積含水率の最小値は、各森林における2007年と2019年のモクマオウの胸高断面積合計および2007年と2019年の胸高断面積合計の差と有意な負の関係がみられた。これはモクマオウの侵入および優占は、土壌からの水の消失を促進する可能性を示唆する。 (6)過去の調査データおよび事業データを活用して父島におけるアカギ、ギンネム、モクマオウの分布データをもとに地形、海岸線からの距離を説明変数とした生息適地モデルを作成した。
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