研究課題/領域番号 |
19H02979
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
平井 規央 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70305655)
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研究分担者 |
上田 昇平 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (30553028)
矢後 勝也 東京大学, 総合研究博物館, 助教 (70571230)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒメシロチョウ / 草原性チョウ類 / 保全 / マイクロサテライトマーカー / ツルフジバカマ / 結実率 / 生活史 |
研究実績の概要 |
ヒメシロチョウの生息地として、青森県、福島県、山梨県、熊本県で野外調査を行った。熊本個体群では4ヵ所、福島個体群では2ヵ所、青森個体群では、3ヵ所の食草自生地でそれぞれ本種の生息を確認した。熊本個体群では、5月に成虫、卵、幼虫、9月に成虫が、福島個体群では、7月に成虫と卵が、青森個体群では7月に成虫、9月に成虫と卵がそれぞれ確認された。熊本個体群については、5月に成虫と卵を、福島個体群については、7月に成虫と卵を、青森個体群については、7月に成虫をそれぞれ持ち帰り、飼育実験に供した。幼虫期間については、各個体群ともに高温ほど短い傾向がみられ、熊本個体群では、20℃16Lで約25日、27℃16Lで約18日であった。本種は蛹期に冬休眠を行うが、熊本個体群の臨界日長は、約12.5時間、福島個体群では約13.5時間、青森個体群では約14.5時間と推定され、緯度が高くなるほど臨界日長が長くなることが示された。これらの結果から、本種は熊本県、福島県、青森県ではそれぞれ年に4、4、2化を経過すると推定された。 熊本県、青森県、大阪府で、ツルフジバカマの開花と結実の調査を行った。一部の生息地では、結実率が低い個体が見られた。得られた種子を2020年度に播種し、発芽実験を行う予定である。 ヒメシロチョウのマイクロサテライトマーカーを開発するために、次世代シーケンサーMiseq(Illumina)を用いてde novoシーケンシングを行った。その結果、マイクロサテライトを含むコンティグ配列が多数得られ、マーカー候補の選抜を行っている。 その他にも、シルビアシジミやウラナミジャノメなどの草原性絶滅危惧チョウ類について、集団遺伝学的解析を行い、一部の結果を論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外調査について、予定していた場所をほぼ全て踏査することができ、ヒメシロチョウの生息を確認できた。また、ツルフジバカマについても各生息地で結実率や種子のデータを得ることができた。 室内実験による生活史調査はほぼ予定していた内容について結果を得ることができた。 DNA実験では、ヒメシロチョウのde novoシーケンシングに成功し、多数のマイクロサテライトマーカーの候補を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
野外調査については、実際にツルフジバカマの訪花昆虫を採集し、種の同定と送粉者としての働きを評価する。また、ヒメシロチョウの生息調査と、ツルフジバカマの結実調査も継続する。 DNA実験については、得られたマーカー候補からプライマーを設計し、遺伝子マーカーとして適切なものかを判断するための有用性試験を行う。また、集団解析に用いるサンプルの採集と整理を行う。ツルフジバカマや他のチョウ類等についてもマーカーの開発を試みる。
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