研究課題/領域番号 |
19H02984
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横張 真 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60302379)
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研究分担者 |
村山 顕人 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (60396760)
寺田 徹 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00619934)
飯田 晶子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (90700930)
秋田 典子 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (20447345)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ランドスケープ計画 / 都市計画 / 土地利用計画 / 都市農村計画 / 都市農業 |
研究実績の概要 |
「農」と「都市」の2つのレイヤが重なり合う農住混在市街地を主な研究対象地として、「制度」、「フードシステム」、「サービスの需給」、「空間実態」の点から研究を行った。また国際研究集会「緑農住まちづくり国際ワークショップ」を開催し、これらの研究成果について、国内外の研究者と意見交換を行った。具体の研究成果は以下のとおり。
・「制度」について、東京都内13市区の「都市農業振興計画」193施策を分析し、都市農地は「利用価値」に重点が置かれ「存在価値」を重点施策とするものは少なく、生産緑地制度に一定の期待がなされている一方、他計画との連携が殆どなされていないことを把握した。また、東京都西東京市都市計画審議会が建議した「都市農地の保全と価値創造に関する提言書」について、その作成プロセス等を分析した ・「フードシステム」について、東京都練馬区の体験農園において利用者の収穫物の扱いを把握し、農地から近隣市街地へのローカル・フードシステム(食料供給状況)を可視化した。また、東京都国分寺市の都市農業の流通支援システムについて、組織化のプロセスという点から分析を行った ・「サービスの需給」について、東京都全域を対象に、農家の農地の貸与と都市住民の農の活動ニーズとの需給関係を解明した。また、東京都西東京市を対象に農住混在市街地の住民にアンケート調査を行い、住民が認識する生態系サービスについて、公園、農地、屋敷林などの空間別に把握した ・「空間実態」について、東京都練馬区および日野市における農住混在空間の実態について、土地利用データおよび登記簿謄本情報を用いて、都市基盤整備と都市農家による農業経営の観点から分析した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象地の自治体や農業経営者の協力によりデータの取得が効率よく行えたため、各種調査を滞りなく実施することができた。また、海外の研究者を含めて、関係者と密に連携することにより、国際研究集会についても実施することができた。関係者との協力・連携体制の構築により、本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究成果を論文として出版するとともに、成果を踏まえた発展的研究を行う。発展的研究の方針については以下のとおり。 ・首都圏以外の都市圏における都市農業施策の特徴を把握し、日本全体の都市農業施策の特徴を概観する。この特徴を踏まえながら、その中で萌芽的・先進的な取り組みについて具体的にケーススタディを実施しその成果や課題を明らかにする。さらに海外での類似事例の調査も踏まえながら、都市農業の展開の方向性を探る ・引き続き、東京圏の農住混在空間の実態分析を行うとともに、農住混在空間で展開されている先端的な市街地空間整備プロジェクトについて情報収集・分析を行い、農と都市がレイヤとして重なる農住混在空間が動態的に形成されていく状況を理解する。また、そうしたプロジェクトが農(農業)および都市(宅地開発・市街地整備)の文脈の中でどのように位置づけられ実現していくのかについて考察する ・農住混在空間形成の鍵となる生産緑地について、過去から現在までの転用実態を把握する。また、それが市街地におけるオープンスペースの分布にどのような影響を及ぼしてきたかを、集塊性やパッチ間距離といった空間指標を用いてGISにより定量的に把握し、(空間計画的側面の)緑地計画における生産緑地の扱いについて考察を行う
また、昨今の新型コロナウイルス感染拡大防止策の実施により、住民のライフスタイルが変化し、自宅周辺の身近な緑農空間の認識や、近所の直売所利用、農園利用などに対して変化が起きていることが予想される。また、普段から「農」に関わる活動を行っていた者とそうでない者とで、変化の様相が異なっている可能性がある。「農」と「都市」のレイヤを動態的に捉え、状況変化に対して柔軟な空間社会システムを提案しようとする本研究にとって、こうした昨今の住民行動等の変化を把握することは有意義であるため、新たな研究課題として追加する。
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