研究課題/領域番号 |
19H02985
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
吉崎 真司 東京都市大学, 環境学部, 教授 (50318622)
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研究分担者 |
福田 達哉 東京都市大学, 理工学部, 教授 (00432815)
鈴木 彰 東京都市大学, 理工学部, 講師 (50110797)
加藤 真司 東京都市大学, 環境学部, 教授 (50523388)
岡 浩平 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (80573253)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海岸防災林 / 広葉樹 / 風・土壌環境 / 耐潮性・耐陰性 / 海岸環境耐性評価 |
研究実績の概要 |
災害に強い海岸防災林造成にあたって、広葉樹の適切な導入方法やマツ類と広葉樹による複層林を造成する場合の適切な樹林構造のあり様を明らかにすることを目的としている。(1)飛砂が広葉樹の耐潮性・耐塩性に及ぼす影響について、砂粒による葉への傷つけ実験、塩水浸漬の有無による葉の変色実験を行った結果、風速が増すほど、葉が固定されているほど傷がつきやすかった。また、塩水の吹き付け実験からは、クロマツが最も耐性が高いと評価された。(2)盛土堤前後の風環境変化について模型実験による検証を試みた結果、防潮堤にあたる海風の角度によって背後の風環境は変化し、背後に残存海岸林がある場合には陸側のり面の風が弱まることがわかった。(3)マツ類と広葉樹の混植による土壌中の菌相への影響について、クロマツと共生する外生菌根を用いて、広葉樹の根から抽出した抽出液を用いた室内実験を行った結果、明確な影響は確認出来なかったため、継続して観察中である。(4)マツ類と広葉樹の耐陰性ついてポット試験を行ったが、明確な耐陰性の違いは確認できず、継続観察中である。(5)マツ枯れ後の海岸林内の植生遷移について、ツワブキを用いて海岸地適応形態の獲得について調査・研究を行ったが、明確な結果を確認することは出来なかった。(6)海岸林を健全に維持するための砂浜環境の安定化技術の開発について、①石川県加賀海岸では、高さ15mの人工砂丘に成立する海浜植物によって風速が低下し、高い飛砂抑制効果が発揮されていた。②島根県黒松海岸では、汀線からの距離、凹凸などの微地形に応じて、風速や堆砂量が変化し、優占種も変化していたことから、立地条件に応じた緑化導入種の検討に役立つと考えられた。また、徳島県大里海岸では、台風19号による高潮被害緊急調査を行った。クロマツやクスノキの被害が激しく、今後の回復状況のモニタリングが重要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)飛砂が広葉樹の耐潮性・耐塩性に及ぼす影響について、①砂粒による樹木葉への傷の有無の確認 ②塩水浸漬の有無による樹木葉の変色の有無の確認 を行ったが、定性的結果は得られたものの、定量的に評価する段階にまで至らなかった。 (2)盛土堤の前後の風環境の変化が植栽木の生育に及ぼす影響について、新たに造成されている人工盛土堤の前後における風環境の変化を、模型実験により検証したが、現地での風観測にまで至らず、模型実験の結果を現地で確認することが出来なかった。 (3)マツ類と広葉樹の混植が土壌中の菌相へ及ぼす影響について、クロマツ林内の土壌において確認される代表的な外生菌根を用いて、広葉樹の根から抽出した成分が外生菌根に何らかの影響を及ぼすのかを確認するための室内実験を行ったが、クロマツや広葉樹の根の抽出液が外生菌根に及ぼす明確な影響を確認することは出来なかった。まずは実験方法の確立が必要であったことから、本実験までに時間がかかり、結果を出すまでの十分な時間が確保できなかった。現在、実験結果の継続観察中である。(4)マツ類と広葉樹の耐陰性の評価について、照度の異なる試験地を設定してポット試験を行ったが、まだ明確な違いを確認できておらず、継続観察中である。(5)マツ枯れ後の海岸林内の植生遷移の実態把握と予測について、海岸林内に生育するツワブキを用いて、海岸地適応形態の獲得について調査・研究を行ったが、ツワブキの海岸地適応形態の獲得を明確に確認することは出来なかった。また、天候不順もあり予定した現地に行けず、林床植生調査も十分にできなかった。(6)海岸林を健全に維持するための砂浜環境の安定化技術の開発について調査・研究を行ったが、天候不順やコロナ禍による移動制限などもあり、後期において十分な現地調査が遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年1月頃から新型コロナウイルスによる感染が国内で急速に広まり、未だ収束の先が見えない状況である。そのために現地調査を伴う本研究の順調な遂行が心配されるが、再開に備えて十分な準備をしておくこととする。 (1)飛砂が広葉樹の耐潮性・耐塩性に及ぼす影響について、①砂粒による樹木葉への傷の有無の確認 ②塩水浸漬の有無による樹木葉の変色の有無の確認 を行った。今後は定量的に評価法を検討する予定である。 (2)盛土堤の前後の風環境の変化が植栽木の生育に及ぼす影響について、初年度は模型実験により検証したが、今後は模型実験の結果を現地で検証するための現地計測を行うことで研究を推進する。 (3)マツ類と広葉樹の混植が土壌中の菌相へ及ぼす影響について、クロマツ林内の土壌において確認される代表的な外生菌根を用いて、広葉樹の根から抽出した成分が外生菌根に何らかの影響を及ぼすのかを確認するための室内実験を行ったが、クロマツや広葉樹の根の抽出液が外生菌根に及ぼす明確な影響を確認することは出来なかった。しかし、実験方法の確立はできたことから、今後は、現地に成立する広葉樹海岸林内の土壌による実験を開始する予定である。(4)マツ類と広葉樹の耐陰性の評価について、照度の異なる試験地を設定してポット試験を今後も継続していく。また、マルチスペクトルカメラによる健全度評価も試みる。(5)マツ枯れ後の海岸林内の植生遷移の実態把握と予測については、ツワブキとオオツワブキの比較により、海岸地適応形態の獲得について調査・研究を進めるとともに、典型的な広葉樹海岸林の林床植生調査も行う。(6)海岸林を健全に維持するための砂浜環境の安定化技術の開発について、現地調査とドローンを用いた遠隔調査を行うことにより、効率的に研究を推進することとする。
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