研究課題/領域番号 |
19H02986
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 真 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60719798)
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研究分担者 |
内海 俊介 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10642019)
山田 孝 北海道大学, 農学研究院, 教授 (20333635)
吉田 俊也 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60312401)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 土砂流亡 / 生態系サービス / 生物多様性 / 大規模野外捜査実験 |
研究実績の概要 |
本年度は、初年度に設置した合計15箇所、各30m四方の範囲で実験的に山腹崩壊を模倣した野外実験を実施した場所において、環境計測、植生調査を開始した。また、窒素固定植物であるケヤマハンノキとエゾヤマハギについて、各1種で植栽する条件と2種を混交して植栽する条件を設けて設定した。また、さらには、実際に山腹崩壊が起こった厚真町での観察例から、エゾシカの食害による植生回復への悪影響が看過できないと考え、全ての箇所で鹿柵を設置し、柵の内外で植生回復を比較するサイトも設置することができた。 環境計測の結果、蛇紋岩土壌と堆積岩土壌では、降雨時の土壌水分の変化動態や、土砂流出量が大きく異なることが明らかになった。同程度の斜度の森林を比較した場合、蛇紋岩土壌では降雨後に土壌水分が減少しにくく、特に秋季以降では土壌中の水分が高止まりしていることが明らかになった。また、土砂流出量は、同程度の斜度の森林でも、蛇紋岩土壌の方が堆積岩土壌よりも流出量のサイト内での最大値は大きい傾向があったが、サイト内でのばらつきは大きかった。サイト内でのばらつきを生み出す要因として、特に蛇紋岩土壌地帯では、リル・ガリーが形成されている場所かどうかで値が大きくことなり、サイト内のばらつきも大きいことがわかった。本年度実施した、低高度で飛行させたドローン空撮では、Z軸方向の誤差1cm以下という精度で、こうしたリル・ガリーの形成を検出することができた。 また、堆積岩土壌地帯に限り、人工林と天然林、それぞれで山腹崩壊を模倣したサイト間では、土砂流出量や土壌水分条件、土砂流出量などに違いは見られなかったが、散布される種子の樹種数は、人工林で多様性が低かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、重機の修理などで若干の遅れが生じたが、鹿柵の設置など、当初想定していなかった重要な実験を開始することもでき、研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍によって海外で開催される学会への参加が困難な状況となっている。一方で、土砂崩れ後に回復する植生への豪雨の影響を評価するため、人工的な豪雨再現実験などを行う必要性がある。そのため、旅費に使用を予定していた予算を人工降雨装置の購入へ利用するなどし、より将来的に豪雨が増加する中で植生回復を制限する要因の理解を深めるように研究を推進する。また、引き続き、本研究の根幹をなす樹木の天然更新や、それらと土砂流出量との関係を丁寧に調査する。
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