研究課題/領域番号 |
19H02988
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山岡 裕一 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00220236)
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研究分担者 |
玉井 裕 北海道大学, 農学研究院, 教授 (50281796)
石賀 康博 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50730256)
岡根 泉 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60260171)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物病理学 / 樹病学 / 菌類 / 抵抗性 / 内生菌 |
研究実績の概要 |
接種試験用苗を確保するため、外国産トネリコ属4種の挿し木による増殖を試みたが、ホソバトネリコのみ増殖できた。一方、北海道の外国産トネリコ属植物植栽地において、セイヨウトネリコ、ビロードトネリコの苗を採取した。予備試験として、これら外国産トネリコ属3種およびヤチダモの苗を用いて、Hymenoscyphus fraxineusの子のう胞子接種を行った結果、ホソバトネリコ以外の3種では、顕著な外部病徴は認められなかった。一方、茎の皮層を切取り含菌寒天片を接種した場合には、セイヨウトネリコで材部への菌の進展が認められた。札幌市内で生育するセイヨウトネリコ他4種の切り葉にH. fraxineusの子のう胞子を接種し、RNAの抽出を試みたが、抽出できなかった。 札幌市内2地点のトネリコ属7種、近縁属1種について、着葉期の複葉と落葉後の葉軸からの本菌のDNA検出、ならびに落葉軸上での子実体発生を調査した。その結果、8種全ての複葉と葉軸から本菌のDNAが検出されたが、子実体は4種のみで確認され、複葉内に侵入、定着しても子実体形成に至れる樹種は限定的と考えられた。さらに、セイヨウトネリコ他外国産トネリコ属3種とヤチダモを対象に、生葉上での本菌のDNA量を経時的に定量した結果、樹種によりDNA量や増減の時期に差異が認められた。北海道大学札幌キャンパス内で生育するセイヨウトネリコの健全葉を用い、分離・培養法およびメタゲノム解析により、内生菌類相を調査した。その結果、Aureobasidium pullulansが優占種で有ることが示唆された。また、本菌には、H. fraxineusの子嚢胞子発芽の抑制効果が認められた。 札幌市内2地点のトネリコ属7種9個体と近縁属1種1個体についてフェノロジーおよび病徴の進展を観察した。その結果、ビロードトネリコ、アメリカトネリコ各1個体で病徴が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目以降の実験に必要な苗のうち、北海道のセイヨウトネリコ、ビロードトネリコの苗は確保できた。また、これまでの研究から感受性の樹種と考えられるホソバトネリコと抵抗性の種と考えられるヤチダモの苗を業者から購入し確保した。さらに苗を増やす必要はあるが、2年目以降の接種試験の実施が可能になった。予備接種試験により、子のう胞子を葉に接種した場合と、茎の皮層を切り取り含菌寒天片による菌糸を接種した場合で、植物の反応が大きく異なる可能性が示され、感染時と組織内でのコロニー拡大時に分けて抵抗性を評価する必要があることが分かった。RNAの抽出方法については、今後検討が必要である。 生葉上および落葉葉軸上でのH. fraxineusの挙動については、外国産トネリコ属植物の種或いは個体によって差があることが示された。また、北海道大学札幌キャンパス内で生育するセイヨウトネリコの健全葉の内生菌群集を明らかにすることができ、その中でAureobasidium pullulansが優占していること,さらには本菌がH. fraxineusの子嚢胞子発芽の抑制能力を有することを明らかにすることができ、A. pullulans等の内生菌類がH. fraxineusの侵入、定着、その後の増殖に影響を与えている可能性が示された。 これまでのところ、明らかな枝枯れ或いは衰退症状を示しているのは,札幌市内のビロードトネリコの1集団アメリカトネリコ1個体のみである。ビロードトネリコについては、北海道大学構内に無病徴の個体が発見されているため、今後比較が可能である。 以上のような成果から、ほぼ予定通り研究が進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに収集した外国産トネリコ属植物およびヤチダモの苗を用いて、H. fraxineusの子のう胞子による葉への接種試験、および含菌寒天片を用いた茎への接種試験を行い、外部病徴、内部病徴の進展を比較し、抵抗性評価を行う。また、接種した苗を用いて、組織学的比較、抵抗性に係わる抵抗性遺伝子の発現パターンの比較を行う。初年度の成果から、抵抗性を有する可能性が高い個体について遺伝子解析を行う。引き続き、外国産トネリコ属植物の苗の収集、増殖を行い、実験に供試する。以上のように、無発病の外国産トネリコ属植物個体上でのH. fraxineusの動態ならびに子嚢胞子感染時と組織内での菌糸進展時の宿主の反応を明らかにし、抵抗性メカニズムの解明のために必要な基礎情報を収集する。 無発病個体に生息する内生菌等の菌類相が生葉内でのH. fraxineusの挙動に影響している可能性を考え、次世代シーケンサーを用いた解析ならびに生葉からの菌類(その他微生物も含む)の分離、同定により、外国産トネリコ属植物の発病個体、無発病個体、ヤチダモ成木の生葉に生息する内生菌類相を明らかにし、初年度のデータも併せて比較解析する。初年度の成果で検出頻度が高かったAuerobasidium pullulansについては、H. fraxineusに対する拮抗作用等の能力を調べる。また、その他の内生菌の中からH. fraxineusに拮抗性を有する菌株を探索する。以上の成果から、拮抗性微生物の候補を選択し、その能力を明らかにする。 引き続き、発病個体と無発病個体のフェノロジーに関する情報を収集し、発病と環境要因との関係性の考察に利用する。
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