研究課題/領域番号 |
19H02989
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山川 陽祐 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20611601)
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研究分担者 |
鄒 青穎 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (40750055)
ゴメス クリストファー 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (20800577)
正岡 直也 京都大学, 農学研究科, 特定助教 (90786568)
堀田 紀文 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00323478)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 深層崩壊 / 地形発達 / 物理探査 / 地下水挙動 / 崩壊危険度評価 |
研究実績の概要 |
本研究は,深層崩壊の実用的な発生危険度評価手法の開発を目指す。深層崩壊は発生頻度が低いものの現象・被害の規模が大きいため,より的確な発生予測が求められる。しかし,崩壊に先立つ予兆が隠微で予測が困難であるため,潜在的な危険個所の段階的な絞り込みがより着実と考えられる。本研究では,既存の地形指標によって抽出された危険個所に対して,地形発達学的手法(谷の下刻発達の評価)および種々のセンシング技術を適用し,地盤内部構造を踏まえた安定性の低い斜面を検出する手法の開発に取り組む。具体的には,深層崩壊の主要な発生場である大起伏の付加体堆積岩山地において,①直接手法を用いた斜面安定性の評価,②物理探査手法およびUAVリモートセンシングの適用性検証,③地形発達学的手法の適用性検証,に取り組む。当該年度においては,①に関して,崩壊トリガーとなる地下水位の降雨応答特性の解明のために,主に静岡県の大井川水系(井川湖周辺)において多地点での水文観測(平水時の流量および渓流水の電気電導度の計測)を実施した。その他,滋賀県の葛川水系(比良山)や台湾の中央山脈南部においても同様の観測を一部行った。②に関しては,葛川水系(比良山)にて比抵抗探査法と自然電位法の適用性の検証を行った。また,台湾の中央山脈南部においても比抵抗探査法の適用性検証を行った。③については,大井川水系(井川湖周辺),葛川水系(比良山),台湾の中央山脈南部においてそれぞれ航空レーザー測量により取得された高精細な数値地形図に基づき,深層崩壊に先立つと考えられる重力変形地形などの判読を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記(研究実績の概要)の観測に基づき,主に下記のような知見を新たに得た。上記①については,これまでほとんど研究例の無い流域の受け盤・流れ盤の地質構造に着目した多地点の水文観測(平水時の流量および渓流水の電気電導度の計測)を大井川水系(井川湖周辺)において実施した。流れ盤の流域で平水時流量が少なく,受け盤の流域では流量が流域ごとに顕著に異なるという特徴を確認し,崩壊の誘因となる降雨-浸透-流出プロセスが受け盤・流れ盤の地質構造に規制される可能性を原位置観測に基づき示唆するに至った。上記②については,現地踏査(断層粘土ガウジの存在を確認)およびボーリング調査から断層の存在が推定される箇所において,比抵抗探査法および自然電位法によりそれぞれ比抵抗値および電位の特異なシグナルが検出され,直接的手法との比較によってこれらの物理探査手法が断層の分布と断層に規制された地下水流動機構を効果的に捉え得ることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
上記①に関して,降雨を外力とする斜面崩壊が選択的な箇所で発生するメカニズムの解明を進める上で,地盤条件と降雨-流出応答との関係性について,その空間分布の実態を把握することが重要と考えられるため,より多地点・多時期(様々な先行降雨条件下)の水文観測データを蓄積する。また,水質シグナルの観測は電気電導度の計測に留まらず,無機金属イオンや水安定同位体比などの測定により多角的にデータ蓄積することを目指す。 上記②については,比抵抗探査法および自然電位法以外に,地下レーダーや地震波探査などの適用性検証を進める。また,UAVリモートセンシングとして,熱赤外カメラを取り付けたドローンによる樹冠温度分布の観測に基づく地下水集中箇所の検出方法の確立を進める。上記③については遷急線の分布に関する詳細な地形解析を進める。
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