研究課題
気候変動に伴って乾燥化が危惧されている熱帯雨林では、熱帯樹木の乾燥ストレス耐性が 種によって異なる可能性があるものの、そのメカニズムは未解明の点が多く残されている。先行研究では主に地上部の生理的・形態学的特性に着目し、乾燥ストレス耐性に関連する水利用特性の評価が行われてきたが、水吸収は主に地下部の根系で行われていることから、本研究では、熱帯樹木の乾燥ストレス耐性の種間差は、吸水深度の違いに起因していると仮説を立て、土壌の乾燥程度が異なる4期間で熱帯樹木の吸水深度の推定を試みた。また、地下部での水獲得特性は地上部器官の特性やパフォーマンスにも関連があることが予想されるため、吸水深度と地上部特性との関係性を解析した。吸水深度に種間差はみられたものの、多くの樹種は表層と深層の両方から吸水する傾向が認められた。これは通常状態では土壌表層に多く存在する養水分を効率的に吸収することと、乾燥期間にも水分を獲得できることとのバランスを図っていることの表れなのかもしれない。また、吸水深度は土壌の乾燥具合だけでなく気温などの他の要因により変動することも明らかとなったが、そのパターンは樹種によって異なったほか、明瞭な変化が認められない樹種も認められた。このことから、地下部での養水分獲得のための多様な戦略の存在が垣間見えるとともに、乾燥化や温暖化といった気候変動の応答は樹種特異的であるため、森林全体での応答予測にはさらなる知見の蓄積が欠かせないと言える。さらに、生育する土壌特性、樹高、材密度、および成長速度と吸水深度に明確な関係性は認められなかった一方で、乾燥した時期や通常状態では吸水深度が深いほど開花頻度は高くなる傾向が検出された。その背景にある詳細なメカニズムについてはさらなる検討が必要であると考えられるが、吸水深度とフェノロジーの関係を明示した初めての研究成果として評価できる。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Frontiers in Forests and Global Change
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Tree Physiology
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