研究課題
本研究は、森林生態系を「植生-土壌系」として気候・土壌と関連づけて分析し、「気候・土壌条件が地上部の光競争を介して針葉樹の優占度を決定する」という仮説の検証を目的とする。本年度はマレーシア領ボルネオ島の熱帯雨林とニュージーランド北島の温帯多雨林で野外調査を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行のため断念せざるをえなかった。そこで、日本国内に絞って、奄美大島・屋久島・霧島山地・宮崎県綾の亜熱帯~冷温帯の針広混交林と照葉樹林、北海道の雄阿寒岳・野幌・苫小牧の冷温帯~亜寒帯の針広混交林と落葉広葉樹林において野外調査を行なった。特に、屋久島では樹木の光獲得効率と光利用効率を明らかにするため詳細な光の三次元分布の測定を行なった。雄阿寒岳では樹木直径の再測定を行い、2004年・2012年・2020年と8年間隔2期間の成長データを取得した。また、これらの調査区に設置した小型の温度ロガーから気温データを回収し、新規調査地には新たに設置した。北海道や屋久島・霧島山地の高標高に位置する調査地には、積雪期間を推定するための地表温度測定用と、土壌有機物の分解速度を評価するための地温測定用の温度ロガーを設置した。さらに、熱帯山地林において土壌老化が進むとともにマキ科針葉樹の優占度が高まる理由を、土壌が貧栄養化する一方で下層の光条件が明るくなることに着目して考察した論文を投稿し、フリーアクセス論文として日本植物学会の英文誌で公表した。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症の世界的流行のため海外調査はできなかったが、日本国内の多様な気候帯における針広混交林と照葉樹林や落葉広葉樹林を比較することで、当初の研究目的を十分達成できる見込みが立った。
今後も新型コロナウイルス感染症の世界的流行が収束するかは不透明であるため、日本国内の多様な気候帯における針広混交林・針葉樹林と照葉樹林・落葉広葉樹林を比較する方向で研究を進めていく。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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