研究課題
本研究は、森林生態系を「植生-土壌系」として気候・土壌と関連づけて分析し、「気候・土壌条件が地上部の光競争を介して針葉樹の優占度を決定する」という仮説の検証を目的とする。本年度はブルネイの熱帯雨林と台湾の針広混交林で野外調査を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行のため断念せざるをえなかった。そこで、日本国内に絞って、屋久島と沖縄島の亜熱帯~暖温帯の照葉樹林、北海道の幌別山・大雪山・苫小牧の冷温帯~亜寒帯の針広混交林と落葉広葉樹林において野外調査を実施した。特に、幌別山では2006年に設定された調査区において樹木直径を再測定して15年間の成長・死亡データを取得し、大雪山ではドローンによる観測を行った。これらの調査区に設置した小型の温度ロガーから気温データを回収し、新規調査地には新たに設置した。さらに北海道の2箇所の広葉樹が優占する湿地林で予備調査をおこなった。大雪山と幌別山での解析結果については、2022年3月の日本生態学会大会で発表した。九州南部から沖縄島にかけての温帯林と亜熱帯林について、気候と地史が樹木群集の組成と多様性に及ぼす影響を明らかにした論文を日本森林学会の英文誌Journal of Forest Researchに発表し、2021年11月に日本時間生物学会学術大会のシンポジウムでその内容について紹介した。本論文は2022年3月の日本森林学会大会で論文賞を受賞した。また、ボルネオのキナバル山の標高に沿った植物種の分布域を土壌条件と関連づけて解析した共著論文と、針葉樹が混交する熱帯ヒース林と広葉樹のみからなるフタバガキ林の成長と死亡を比較してエルニーニョ旱魃と関連づけて解析した共著論文を発表した。土壌条件に関しては、屋久島照葉樹林の樹木根圏土壌における有機酸と熱帯山地林のリター分解に関する国際共同研究についての共著論文を発表した。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症の世界的流行のため2020~2021年度は海外調査はできなかったが、日本国内の多様な気候帯における針葉樹林・針広混交林と照葉樹林や落葉広葉樹林を比較することで、当初の研究目的を十分達成できる見込みである。
日本国内の多様な気候帯における針広混交林・針葉樹林と照葉樹林・落葉広葉樹林を比較する方向で研究を進めていく。ただし、今後も新型コロナウイルス感染症の世界的流行の状況を注視しながら、海外調査の可能性を検討していく。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
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