研究課題/領域番号 |
19H03009
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
岡本 隆 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353626)
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研究分担者 |
松浦 純生 京都大学, 防災研究所, 教授 (10353856)
竹内 由香里 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90353755)
平島 寛行 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究部門, 主任研究員 (00425513)
村上 亘 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353880)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地すべり / 積雪 / せん断強度 / 荷重 / 斜面安定解析 |
研究実績の概要 |
多雪地帯の山地斜面では、3月から5月になると融雪浸透による間隙水圧の上昇を引き金とした「融雪地すべり」が発生することが経験的に知られている。ところが融雪のみでは説明のできない積雪期の地すべり現象も多く確認されており、他の要因も強く関わっていると考えられる。本研究は、融雪以外の要因として積雪層が有するせん断抵抗力や荷重などの「雪の力学的作用」に着目し、それが積雪期の地すべり活動に与える影響を解明することを目的とする。 本年度は冬季の積雪深が3-5mに達する新潟県上越市の伏野地すべり試験地左岸側壁斜面において、融雪期の積雪調査を実施した。実施時の積雪深は3.08m、積雪層はざらめ雪としまり雪の互層からなり、その全層密度は437 kg/m^3であった。掘削した積雪断面において、シアーフレーム(金属製枠、せん断有効面積0.01 m^2)を用いて積雪層面と平行な面及び垂直な面の2方向で積雪層のせん断強度指数(SFI)を直接測定した。測定の結果、表層付近(積雪深2.7~3.0m付近)のSFIは約1 kN/m^2と小さいが、深部になると5 kN/m^2を超えるようになり最大で約15 kN/m^2に達することが明らかとなった。積雪深1.18 m以深では積雪層の硬度が大きくなり、せん断負荷時にシアーフレームの欠損が危惧される状況となったため測定を中止した。なお平行面と垂直面でSFIに明瞭な差は認められず、せん断方向の違いでせん断強度の差異は考慮する特段の必要は無いと考えられた。積雪層の平行面における積雪層全体の平均SFIは7.9 kN/m^2が得られた。 このほか、本年度は積雪層の載荷条件下における地すべり土塊の側部に作用する土圧を明らかにするため、伏野地すべり地の中央部を横断するように3基のパイプひずみ土圧計を11月に設置し観測を開始した。次年度の消雪後に同観測データを回収、解析予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
積雪層の力学作用が地すべりの活動に与える影響を明らかにするためには、積雪層そのものが有する力学的諸性質を直接的に把握することが基本かつ重要な調査項目となる。今年度は当初の研究計画通り、地すべり地に堆積する積雪層の調査を実施し、積雪層の有するせん断強度を積雪層面および鉛直面で測定することに成功した。そのほか2箇所の積雪断面を掘削し、積雪の密度、雪質、雪温、全層密度等の諸性質を測定した。これらの結果を踏まえた9件の学会発表を行うことができた。このことから本課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
積雪層のせん断強度の直接測定に用いたシアーフレームは雪崩を引き起こす弱層を測定対象とした器具のため、現地において強度の大きい(硬い)積雪下層のせん断強度の測定は困難であった。この問題を解消するため、次年度は高強度の測定に対応したシアーフレームを検討し、現場でその適用性を明らかにする。 地すべり地の三次元数値地形モデルを構築し、上部に測定されたせん断強度や積雪荷重を加味した積雪層を載荷させた斜面安定解析を実施する。同解析から、積雪層の層厚やせん断強度が地すべりの安定性に及ぼす影響を定量的に明らかにする。
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