研究課題/領域番号 |
19H03011
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
谷川 東子 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10353765)
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研究分担者 |
平野 恭弘 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (60353827)
松田 陽介 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30324552)
眞家 永光 北里大学, 獣医学部, 講師 (00453514)
和穎 朗太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (80456748)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人工林 / 植物-土壌間相互作用 / 土壌劣化 / 土壌酸性化 / 細根動態 / リター分解 |
研究実績の概要 |
1.土壌環境に触発されて増産される細根は、ひときわ細い低次根(末端に近い部位)であることが先行研究で明らかになっている。そこで、スギの細根を低次根と、基部に近い高次根に二分し、両者について溶脱液を捕集する系の培養実験に供し、溶脱液の解析を行った。また基質の分解速度も調べた。その結果、低次根は高次根に比べ、分解速度は速く、酸性官能基をもつ腐植物質の量は多く、その生産ピークは速いことが明らかになった。これらの違いは、生態系において細根増産を引き起こす土壌は、より多くの酸を受けとり酸性化が進みやすいことを示唆している。 2.ヒノキ7調査地間では、肥沃土壌・痩せ土壌間で細根バイオマスに統計的な有意差はなかったが、痩せ土壌をもつヒノキ林では低次根の1本1本が細長くなり、比重が低下し、根系全体は大きく広がる形に変化していた。このような低次根の形態変化は、そのほとんどが養水分の吸収に特化した役割を担う(ほかに細根には、養水分の輸送を主として担う区分も存在する)ことを考えると、低コストの根で養分を多く吸収したいヒノキの適応であると考えられた。この調査結果を国際誌Plant and Soil に発表した。 3.初年度はスギ・ヒノキの葉と根の分解試験で得られた分解残渣について、次世代シーケンサーで菌叢解析を行った。本年度は、スギの低次根高次根の分解試験で得られた分解残渣についても、同様の菌叢解析を進めている。 4.本課題と先行課題で得られた「植物-土壌間相互作用」の知見を、書籍「森の根の生態学」に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の感染拡大防止策による移動自粛や制限があるため、野外調査・常時メンテナンスが必要な実験・出張して行う分析については見合わせている内容もあるが、その分、すでに得られている試料の分析項目を増やし当初計画以上の解析を進めているため、順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
細根の中で、土壌環境に触発されて増産される低次根は、高次根に比べ分解速度や分解中に放出される窒素やリン成分も異なると考えられる。低次根・高次根の分解試験で得られた試料について、当初予定になかったこれらの生命活動に重要な元素について、溶脱液の解析を開始する。また当初計画にはなかった・あるいはもっと遅く着手する予定であった3次元励起蛍光分析や菌叢解析についてはCOVID-19の影響で実施が難しい研究内容の代わりとしてすでに開始したので、これを引き続き進める。土壌分析の結果から、その養分保持機能に細根動態が関与するか解析を進める。
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