研究課題/領域番号 |
19H03013
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五十嵐 圭日子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (80345181)
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研究分担者 |
高畠 幸司 琉球大学, 農学部, 教授 (50446621)
飛松 裕基 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (20734221)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 木材腐朽菌 / ゲノム編集 / バイオマス変換 |
研究実績の概要 |
きのこの多くは、木材を栄養源として生育する木材腐朽菌である。我々は既にきのこが作る子実体を食品や薬として古来から利用しているが、きのこの木材分解メカニズムや子実体形成メカニズムには依然として不明な点が多い。本研究の目的は、ゲノム編集技術を利用して木材腐朽現象を理解し、「きのこはどのように木材を分解しているのか」を明らかにするとともに、新しいバイオマス変換系の構築に応用することである。 本年度は、木材腐朽菌におけるゲノム編集技術の確立を試みた。具体的には、白色木材腐朽菌Phanerochaete chrysosporiumに対し、すでにゲノム編集技術が確立されたCoprinopsis cinerea(ウシグソヒトヨタケ)で用いられているゲノム編集用ベクターの遺伝子導入を試みた。まずP. chrysosporiumの分生胞子を取得し、その発芽直後の菌糸を用いて電気穿孔法(エレクトロポーレーション)による遺伝子導入を試みたが、ベクターの導入は確認できなかった。そこで現在担子菌の遺伝子導入において汎用されている、プロトプラストに対するポリエチレングリコール(PEG)/CaCl2法による遺伝子導入を試みている。また、C. cinereaにおいて、糖質関連酵素遺伝子のゲノム編集を行った。その結果セルラーゼ遺伝子を含む計6遺伝子のノックアウト株を作出することに成功し、導入された変異の解析を行った。また以上の内容について学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白色木材腐朽菌P. chrysosporiumを含む複数の木材腐朽菌でゲノム編集用ベクターの導入を試みており、C. cinereaにおいては実際に糖質関連酵素のノックアウト株が得られているとともに、培養実験に供するための予備実験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
P. chrysosporiumを含む木材腐朽菌では、形質転換条件の検討を行い、安定形質転換体を取得し、ゲノム編集実験系を確立することに努める。また現在用いている抗生物質ハイグロマイシンBは選抜に高濃度が必要である。したがって、他の生物種でも用いられている抗生物質を試し、形質転換体の選抜方法についても検討を行う。 C. cinereaについては、糖質関連酵素遺伝子のノックアウト株を取得できていることから、バイオマスを用いた培養を行い、二次元NMRによる分析を行う予定である。
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