研究課題/領域番号 |
19H03018
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
和田 昌久 京都大学, 農学研究科, 教授 (40270897)
|
研究分担者 |
吉田 誠 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30447510)
久住 亮介 京都大学, 農学研究科, 助教 (70546530)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | MRマイクロスコピー / セルロースヒドロゲル / テーダマツ / 固体NMR / 腐朽木材 |
研究実績の概要 |
本研究は、MRI法(MRマイクロスコピー)をセルロース系材料や木質系材料に適用し、観察手法を確立することを目的としている。 本年度はまず、既存の核磁気共鳴分光(NMR)装置を改良してMRマイクロスコープの作製に取り組んだ。これまでに、NMR装置の300 MHzワイドボア超伝導磁石(7.0 T)とJEOL CMX300搭載のRFアンプに三軸勾配磁場コイルと勾配電源、高感度のソレノイド型RFコイルを組み込んだ。OPENCORE NMRの分光計を改変してMRI分光器を作製していたが、電気回路の設計変更が必要となり、作製完了にはいたらなかった。 観察対象試料であるセルロースヒドロゲルの調製法確立に取り組んだ。分子量の異なるセルロース試料を60wt%のLiBr水溶液に高温で溶解後、室温まで冷却して水洗することによりヒドロゲルを調製した。電子顕微鏡観察や比表面積測定により、ヒドロゲル内部のナノフィブリル構造と細孔構造を評価した。また、ヒドロゲルの圧縮試験を行ない、分子量が大きいセルロースほど、圧縮ヤング率が大きく、セルロース濃度の2乗に比例して増大することが明らかになった。 もう一つの観察対象試料である木質系材料は腐朽木材である。本年度は木材を強制腐朽させる技術を確立することができた。また、MRマイクロスコピーのための予備実験としてテーダマツあて材と正常材を試料とし、固体13C NMRに供した。CP/MAS測定では、あて材と正常材に大きな違いはみられなかったものの、スペクトルのピークを木材の各成分に帰属した。DD/MAS測定では、非晶が強調したスペクトルが得られ、リグニン芳香環由来のピーク強度が小さかった。また、緩和時間測定を行い、セルロースとリグニンでは運動性に違いがあることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
核磁気共鳴分光(NMR)装置を改良してMRマイクロスコープの装置作製までが本年度の目標であった。しかし、OPENCORE NMRの分光計を改変してMRI分光器を作製する過程において、信号出力の仕様を変更する電気回路の設計変更が必要となった。そのための、再設計、電子工作などに時間が費やされ、MRI分光器作製完了に至らなかった。 観察対象試料であるセルロースヒドロゲルならびに腐朽木材の調製法は確立できた。また、セルロースヒドロゲルと木材のキャラクタリゼーションも概ね当初の予定通りに進行できている。したがって、観察試料の準備には問題ないと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
MRマイクロスコープの装置作製を急ぐ。NMR・MRIを専門とする研究協力者との連絡を密とり、設計上の問題点は一通り洗い出せたと思っている。作業時間を長く取るなど、装置作製に注力したい。 セルロースヒドロゲル試料については、当初の予定通り、構造と物性の関係について検討するとともに細胞培養の予備実験を行う。また、腐朽木材については、強制腐朽試験をさせた試料を用い、固体NMR測定を行ってMRマイクロスコピーの相補的データ取得を目指す。
|