建築分野での木材利用は、これまで住宅を中心に行われてきたが、欧州や北米など世界的に中大規模建築への利用が盛んに行われるようになっている。わが国も例外ではないが、最大のハードルが火災である。鉄筋コンクリート造や鉄骨造は、建物内の可燃物が燃え尽きてしまえば、構造自体は不燃物であるため自消する。一方、木造は構造自体が可燃物であるため、建物内の可燃物が燃え尽きた後も自消することはない。そのため、これまで耐火部材として不燃薬剤を注入した材との複合などが行われてきたが、このような複合化をしてしまうと、建物の解体時に埋め立てるしか廃棄ができなくなってしまい、カスケード利用ができなくなる。燃え止まりのカギは灰分にあると思われる。理由は、炭の酸化に対して灰分が触媒として働き、活性化エネルギーを低下させ、酸化反応を促進するからである。つまり、灰分量の少ない材を使えば、木材のみで自消する可能性がある。そこで、灰分量の比較的少ないヒノキ材を用いた1時間耐火試験、また、灰分量の少ないベイマツ集成材3体について2時間耐火試験を行った。荷重支持部に相当する断面は幅315mm×せい600mmで、その周りに厚さ120mmの集成材を配置している。長さは5500mmである。試験体内部の温度を測定するため、長さ方向に5か所、各々5つ、合計25の熱電対を設置した。ヒノキ集成材については、1時間の加熱後23時間炉内に放置した。すべての熱電対は木材の炭化温度260℃に達しておらず、また、すべて温度が下がっていることが分かった。脱炉時、試験体にわずかに赤熱が残っていたが、燃え止まったといっていいであろう。また、ベイマツ集成材2時間耐火試験3体中1体は、下面2か所に赤熱が残っているだけで、ほぼ燃え止まっていた。25か所の熱電対の温度もすべて下がっており、このまま放置しておけば、いずれ燃え止まったと考えられる。
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